呼吸筋のポンプ作用
今回は呼吸時の胸郭(呼吸筋)のポンプ作用について学びます。
解剖学の胸腔の圧力についてでの内容に似ていますが復習も込めて、喚起のメカニズムについて学んでいきましょう。
吸気時の呼吸筋
吸気時は、以下の呼吸筋により行われます。
- 横隔膜が収縮して、胸腔が下に広がる。
- 外肋間筋が収縮して、胸郭が外側に広がる。

吸気時は、横隔膜と外肋間筋の収縮により胸腔体積が増加して、胸腔内の陰圧が強くなります。
胸腔内圧が陰圧になると、肺胞が膨らみます。
呼気時の呼吸筋
呼気時は、筋肉は使われません。吸気時に収縮した呼吸筋が弛緩することにより呼気が行われます。
- 横隔膜が弛緩して、元の位置に戻る。
- 外肋間筋が弛緩して、胸郭が元に戻る。

吸気時に収縮していた横隔膜と外肋間筋が弛緩して胸腔体積が減少します。胸腔の体積が減少すると、胸腔内圧の陰圧が弱くなります。
胸腔内圧の陰圧が弱くなると、肺胞を膨らます力が弱くなるため、肺胞が縮んで息が吐きだされます。
このように、胸郭の動きにより胸腔が広がったり縮んだりする様子を『胸郭のポンプ作用』もしくは『呼吸筋のポンプ作用』といいます。
ちなみに、安静呼気終了時に肺内に残った空気の量を「機能的残気量」といいます。
この機能的残気量は、『呼気終了時に肺の縮もうとする弾性と胸腔の外に広がろうとする弾性のつり合いにより決まります。』
いきなり、弾性という言葉が出てきて、この文章の意味はなかなか理解しにくいと思います。しかし、過去に試験でもこの文章が出題されていますので詳しく説明しますね。
肺の縮もうとする弾性とは?
弾性という意味を調べてみると
物体に力を加えているときに生じた変形が,力を除くともとに戻る性質。
ブリタニカ国際大百科事典より
とあります。
イメージとしては、肺胞は風船のようなものです。
風船に空気を入れると、どんどん大きく膨らみます。しかし、膨らました風船の口を結ばずに開放すると風船が縮んでしまいます。このように、変形した物体が元に戻ろうとする力を弾性といいます。
肺の縮もうとする弾性とは、肺胞の弾力により元の状態に戻ろうとする力(縮もうとする力)のことです。

胸郭の外に広がろうとする弾性とは?
胸郭は、呼吸筋や呼吸補助筋により引っ張られて、常に外側に広がる方向に弾性が働いています。

ということで、先ほどの
機能的残気量は、呼気終了時の『肺の縮もうとする弾性』と『胸郭の広がろうとする弾性』で決まる。
という意味が分かったでしょうか?
機能的残気量とは、呼気終了時に肺に残った空気の量のことです。
呼気終了時には、肺胞はペッタンコにならずある程度の大きさで膨らんでいるんです。その大きさは、肺胞の縮もうとする弾性と胸郭の外に広がろうとする弾性がつりあって同じ力になった状態で決まる。ということです。
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