※※当ページは、誤記があります。修正するまでは、『サーファクタントの組成』の項目より読んでください。誤記については、ページ最下部のコメントのとおりです。
サーファクタントというのは、肺胞に発生する表面張力を弱める物質です。
肺胞のような球形の物質には、表面張力という力が働きます。この力は、肺胞を縮める方向に力が働きます。

表面張力
したがって、表面張力が強くなると肺が膨らみにくくなり肺のコンプライアンスが高くなります。このような表面張力を弱める物質が肺の内部から分泌されるサーファクタントという物質です。
今回は、サーファクタントの働きを詳しく説明します。サーファクタントをより理解するためには、表面張力について詳しく学ぶ必要があります。
目次(クリックすると移動します)
表面張力とは?
ラプラスの式
サーファクタントというのは、肺胞の表面張力を弱める物質です。そもそも表面張力は、肺胞に対してどのような力が働くのでしょうか?
表面張力というのは、具体的には液体表面が丸まって縮もうとする力です。この力が、球体に対して働くと球体が縮もうとする方向に働きます。このときの、表面張力と球体内の圧力の関係は「ラプラスの式」で表わされます。
※P=2T/R
- P:肺胞内の圧力
- T:表面張力
- R:球体の半径

ラプラスの式
このとき、T(表面張力)が一定であれば球体に働くP(圧力)は、R(半径)に反比例することが分かります。半径が小さいほど、圧力が大きくなりますよね。
例えば、T=20の場合
P=40/Rとなり、PとRの関係は以下のグラフのようになります。

半径と内圧の関係
計算してみよう
表面張力と半径の関係をより理解するために、実際に「ラプラスの式」に数値を代入して計算してみましょう。

イメージ図
①T=20、R=0.1 ②T=20、R=0.05
T表面張力は、同じで半径が半分の状況とで計算してみましょう。
①の場合
ラプラスの式に、与えられた数値を代入します。
P=2T/R
P=2×20/0.1
P=40/0.1
P=400
②の場合
同様にラプラスの式に、与えられた数値を代入して計算します。
P=2T/R
P=2×20/0.05
P=40/0.05
P=800
以上のように、表面張力が一定であれば半径が小さい程、肺胞内の圧力が大きくなります。このように圧力が低い肺胞と高い肺胞がある場合、呼吸した時には、圧力が低い肺胞に空気が入りやすくなります。

圧が低い肺胞に空気が集中する
肺胞によって、膨らみ方にばらつきが出てしまいます。
しかし、実際のところこのようにはなりません。
なぜなら、サーファクタントによりT表面張力を調整してくれるからです。サーファクタントは、肺胞の内部から分泌されます。サーファクタントの密度が大きいほど表面張力を下げる力が強くなります。したがって、肺胞が小さくなるとサーファクタントの密度が大きくなるので表面張力を小さくします。

肺胞が縮むと密度が大きくなる
したがって、半径が小さくなると上の図のようにT(表面張力)が小さくなります。Tが小さくなった場合を計算してみると。

表面張力が下がった場合
③T=5、R=0.05
P=2T/R
P=2×5/0.05
P=10 /0.05
P=200
今まで計算した結果を下にまとめます。
- ①T=20、R=0.1、P=400
- ②T=20、R=0.05、P=800
- ③T=5、R=0.05、P=200
このように、小さな肺胞はサーファクタントにより表面張力を低くして肺胞内圧を低くしているのです。
生体の仕組みに感動しますね。
サーファクタントの組成
表面張力について長々と説明しましたが、実際に試験によく出題されるのはサーファクタントの組成についてです。しっかりと覚えましょう。
サーファクタントの組成
- リン脂質
- 中性脂質
- たんぱく質
サーファクタントは、主に肺胞のⅡ型上皮細胞で作られます。サーファクタントは、表面張力の調整以外にも、マクロファージを活性化したり生体の防御反応などにも働きます。あとの項でも学習しますが、ARDS、胎便吸引症候群などの疾患はサーファクタントの機能低下や産生低下などを引き起こします。
まとめ
- サーファクタントとは、表面張力を抑制する物質
- 表面張力は、肺胞を膨らませるのを抑制する力
- 表面張力は、球の半径に反比例する
- サーファクタントの組成は、リン脂質80%、中性脂質10%、タンパク質10%
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