呼吸不全の栄養療法(経腸・静脈栄養)

食事のみで栄養素が足りない場合は、栄養療法を実施します。

栄養療法には、経口摂取やチューブを使って胃もしくは、腸に直接栄養素を流し込む「経腸栄養」と、血管内に輸液にて栄養素を投与する「静脈栄養」があります。

栄養療法の種類

感染リスクが低いことや、医療コストが低いという理由で、栄養療法の第一選択は、「経腸栄養」です。

以下にそれぞれの特徴について、紹介します。

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経腸栄養

経腸栄養

大塚製薬工場HPより引用(https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/en/)

経腸栄養は、口から食事する「経口摂取」と、チューブを胃または、小腸まで挿入して直接栄養素を注入する方法があります。チューブは、基本的には鼻から挿入します。

以下に、経腸栄養の長所と短所を搭載します。とても重要です。

★経腸栄養の長所★
  • 経腸栄養では、血管内にカテーテルを挿入する必要がないので感染のリスクが少ない。
  • 胃内へのカテーテル挿入は簡単なため、直ぐに開始することができます。
  • 投与する栄養剤や挿入するカテーテルなどの価格も、静脈栄養と比較して遥かに医療コストが低いです
★経腸栄養の短所★
  • ショックや循環動態不安定時は、使用できない。
  • 胃内投与では、食道への逆流や嘔吐の危険性があります。
  • チューブを誤って気道に挿入することによる窒息事故のリスク(事故防止の為、挿入後のレントゲン確認が推奨されている。)

経腸栄養を行うと、食物を消化・吸収するために血液が小腸に集中してしまいます。その為、全身の血圧が低下しやすくなるので、ショック時は使えません。

また、合併症として逆流・嘔吐の頻度が高いので特に注意が必要です。誤嚥のリスクがある患者の場合は以下の予防を行います。

誤嚥対策・予防
  • セミファウラー位・・・・仰向けに寝て、上半身を15~30度起こした状態。状態を起こすことで、逆流を予防します。
  • 消化管蠕動促進薬・・・副交感神経を刺激して、腸の働きを増強します。
  • 持続注入・・・・継続的に少しずつ投与することで、逆流を防ぎます。
  • 空腸チューブの挿入・・・・チューブ先端を幽門(胃の出口)に挿入します。小腸投与は、胃内投与と比較して逆流しにくいです。

静脈栄養

静脈栄養の適応

静脈栄養は、「医療費が高い、高血糖により免疫力の低下、カテーテル感染のリスク」など、複数の問題点があります。その為、経腸栄養が実施できない場合にのみ実施して、合併症予防に努めながら実施しなければなりません。

静脈適応するのは以下の場合です。

  • 入院時から経腸栄養が実施できない場合
  • 経腸栄養の継続ができなくなった時
  • 経腸栄養では、目標エネルギーの投与量に足りないとき

静脈栄養の方法

1.カテーテルの挿入

高カロリーの輸液を行う場合は、血流が多く太い血管が必要です。その為、マキシマムバリアプレコーション(帽子、マスク、ガウン、滅菌手袋、全身ドレープを用いた滅菌操作)にて中心静脈カテーテルを挿入します。

挿入する中心静脈は、大腿静脈・内経静脈・鎖骨下静脈・上腕静脈のいづれかになります。

カテーテル挿入部位
  • 大腿静脈・・・挿入は比較的容易。陰部からも近い為、感染のリスクが高い。また血栓ができやすい。
  • 内頚静脈・・・挿入が比較的容易であり、誤穿刺による合併症のリスクが低い。感染リスクはやや高い、首に近いので患者の違和感が大きい。
  • 鎖骨下静脈・・・鎖骨と靭帯の狭い隙間を狙って穿刺をしなければならない為、挿入の難易度が高い。鎖骨下静脈付近には、鎖骨下動脈・肺が近い為、誤穿刺により、気胸・血胸のリスクがある。感染症のリスクは低い。
  • PICC・・・上腕の末梢静脈に挿入する方法。感染リスクが低く、合併症が少ない。血栓のリスクが高い為、短期間の実施時に選択される。

2.静脈栄養の投与方法

静脈栄養では、血液に直接投与する為、高血糖になります。高血糖になると免疫力が低下して感染症になりやすくなります。これらの合併症を防ぐために、以下の点に注意します。

  1. 静脈栄養と経腸栄養を併用する。経腸栄養を徐々に増やしていき、経腸栄養が投与目標量の60%を超えたら、静脈栄養を止める。
  2. 重症患者に静脈栄養を投与する場合は、最初は目標量の80%程にして、過剰栄養にならないように注意します。
  3. これらの投与方法で、血糖値は120~160mg/dlを目標に、180mg/dlを超えないように管理します。

補充療法・免疫学的栄養管理

ここまでは、生命活動に必要な最低限の栄養素について紹介しました。その他、呼吸不全の栄養管理では免疫力を上げる為の栄養素も注目されています。

  • ARDSなどでは、酸化ストレスが増加する。抗酸化ビタミン・微量元素補充が効果的等報告がある。
  • 手術前に、アルギニンを投与すると免疫機能改善。熱傷・外傷には、グルタミン投与が、抗酸化作用、免疫機能改善することが報告されています。

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