呼吸不全に対する治療の中心は、「水分バランスの管理」と「栄養の管理」です。今回は、それらの管理方法を順番に紹介します。
水分管理
水分管理の必要性
水分バランスの管理が特に重要になるのは、ARDS、うっ血性心不全、肺水腫です。特に、ARDSでは、肺が炎症を起こして、肺血管から肺に水分が移動しやすい状態になっています。(肺毛細血管の透過性の亢進)
肺に水が溜まると、肺水腫になりガス交換ができなくなります。したがって、呼吸不全時には体内の水分が過剰にならないように管理することが重要です。

水分の管理方法
1.輸液量の制限
水分の過剰を防ぐために、必要最低限の輸液にします。
2.利尿剤の使用
体内の余分な水分を排出するために、利尿剤を使用します。商品名では、「ラシックス」などを用いられます。
3.透析
腎臓での尿の作成は、心臓から拍出される血液による圧力を利用しています。したがって、全身状態が悪化して心臓の機能が低下するとおしっこの量も低下します。
利尿剤を用いても、水分管理が困難な時は、透析療法を実施します。特に、循環状態が悪い患者さんなどには、ICUにてCHDF(循環器に負担が少ない透析療法のこと)が行われます。
栄養管理
栄養管理は、呼吸不全患者の予後に大きな影響を与えます。ここからは、呼吸不全患者に対してどのように栄養管理をすればいいかを紹介します。
呼吸不全患者に必要な栄養素
呼吸不全患者に必要な、栄養素は、「エネルギー源(タンパク質・炭水化物・脂肪)、必須アミノ酸(タンパク質)、必須脂肪酸(脂肪)、ビタミン、微量元素など」、生理学的に必要な栄養です。
また、特定のアミノ酸や魚油などにより強化された栄養剤が、免疫やガス交換能改善に高価があると報告されています。
呼吸不全患者に必要なエネルギー量
- 栄養の維持・・・安静時のエネルギー消費量の30%増し
- 栄養状態の改善・・・安静時のエネルギー消費量の50%増し
さらに、エネルギーをどのような、栄養素から摂取するかについてです。一般的な、呼吸不全患者が摂取する栄養素の割合は、以下のように調整します。
- タンパク質・・・20%
- 炭水化物・・・60~70%
- 脂肪・・・20~30%
一般的な人の食事と比較して、タンパク質をやや多めに摂取するという程度の違いだけです。ただし、重症患者の場合は、1日当たり1~3g/kgのタンパク質を投与します。(重症疾患では、タンパク質の分解が亢進する為)
あと、COPDなどの慢性閉塞性疾患(Ⅱ型呼吸不全)患者などのような、肺胞換気量が低下している場合は、炭水化物の摂取の割合をさらに減らす必要があります。
理由は、炭水化物を体内で消費すると炭素がつくられ、体内での二酸化炭素の量が増加してしまうからです。このような場合は、「高脂質含有経腸栄養剤」を利用して、脂肪からのエネルギー摂取の割合を増やします。
ストレス時の代謝亢進
感染や外傷などのストレスがある場合は、代謝量が増えます。
- 術後・・・数%
- 多発骨折・・・10~30%
- 重症感染症・・・20~60%
- 体表面の20%以上の熱傷・・・50~110%
ストレスがないときの代謝では、脂肪が中心に消費されます。しかし、ストレス時には、脂肪以外にもタンパク質も消費される為に、代謝が多くなります。
代謝が行進すると、血糖値も上昇しやすくなるので、糖尿病患者の場合は特に注意が必要です。
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