呼吸不全とは、PaO2、PaCO2が異常値となり、生体に異常が出ることです。呼吸不全は、呼吸器が原因となるもの以外にも、心臓・膵炎・外傷・感染症などからなるものがあります。
今回は、全身管理が必要となる呼吸不全の種類と病態について学んでいきましょう。
まず、呼吸不全には、急に発症し急性に増悪する急性呼吸不全と、1カ月以上にわたって、病態が持続する慢性呼吸不全に分類することができます。
急性呼吸不全の原因となる疾患は、「ARDS、ポリオやギランバレー症候群などによる呼吸金麻痺、自然気胸、肺血栓塞栓症」などがあります。
目次(クリックすると移動します)
急性呼吸不全
ARDSとは
ARDS(エーアールディーエス)は急性呼吸不全の代表的な原疾患です。ARDSは、様々な原因により肺が炎症を起こし、肺の血管の透過性が進行する疾患です。
肺の血管の透過性が進行すると、肺の血管から血液の成分(水分)が肺胞内に溜まり、ガス交換を邪魔してしまいます。

ちなみに、ARDSのうち「PaO2/FIO2≦300」のもの(酸素障害が比較的軽いもの)をALI(急性肺損傷)と呼んでいます。
ARDSの原因
ARDSの原因は、多様です。肺疾患が原因のものと、肺疾患以外が原因のものがあります。この表は、試験によく出ますのでしっかり覚えてておきましょう。
SIRSとは
ARDSなどの他にも、感染症・外傷などにより全身性の炎症反応を起こす疾患があります。例えば、敗血症・多臓器不全などです。
これらの、全身性の炎症反応をまとめて、SIRS(サーズ)と呼ばれます。ARDSもSIRSの中の1つです。
SIRSの診断基準は、以下の4項目のうち2項目以上が当てはまる場合をいいます。これらの条件は、確実に覚えておきましょう。
MOF
低酸素血症、循環障害、全身性炎症反応などにより、複数の重要臓器が機能不全することを多臓器不全(MOF)といいます。MOFは、multiple organ failureの略語です。
organ:器官
failure:失敗,故障
MOFが原因で、ARDSを合併したり、ARDSからMOFを合併したりします。
ARDSから、MOFを合併すると予後不良です。ARDSからMOFに合併させないように、MOFの予防が呼吸不全治療では非常に重要です。
人工呼吸器による肺損傷・多臓器不全
高圧や交換機量の陽圧人工呼吸は、肺胞や肺血管の透過性を亢進させてARDSのような肺損傷を引き起こす恐れがあります。
特に、ARDSの患者の肺は、水が溜まった肺胞と比較的問題がない肺胞など、部分により状態が異なります。このような、肺に人工呼吸で空気を送り込むと、水が溜まった肺胞には空気が流れずに、正常な肺胞に空気の流れが集中します。
その為、正常な肺胞までもが過膨張により傷害されてしまう恐れがあります。障害された肺は、透過性が上がり肺内の炎症性物質が血管内に流れ込み、全身性の炎症反応を引き起こし、最悪の結果、多臓器不全を合併することもあります。

慢性呼吸不全の管理
予後に影響する因子
慢性呼吸不全の予後に与える因子について紹介する。これらを日ごろから注意して管理することが大切。
肺性心
肺性心は、慢性呼吸不全の全身合併症の一つです。肺が原因で肺への血液の流れが悪くなり、肺へ血液を送り出している右心室に負担がかかり、右心室の拡張・肥大を起こす状態です。

肺性心の原因は、「肺血管床の減少、低酸素性血管攣縮、アシドーシス、多血症」などがあります。これらの、原疾患の治療により予防しなければなりません。
慢性呼吸不全の急性増悪
慢性呼吸不全は、急性増悪を起こすことがあります。急性増悪を起こすと急性呼吸不全と同様の全身合併症をおこします。
治療法は、急性呼吸不全に準じますが、慢性疾患により呼吸機能が低下しているので急性呼吸不全以上に治療が難しい。
最近のコメント