運動療法は、呼吸リハビリテーションで最も効果が確立されています。「評価、処方、トレーニング」で構成されます。
リハビリテーションの分野で最も重要な単元です。試験にもたくさん出題されますので、一通りの」項目をまとめました。
内容が多いので一気に覚えようとせずに、まずは「タイトル」になっているような重要な用語を覚えて、徐々に詳細の知識を足していくと良いです。
目次(クリックすると移動します)
運動の評価
負荷試験の評価
- 6分間歩行試験
『室内の平坦なコースを6分間でできるだけ早く歩いてもらい、歩行距離を測定します。』
同時に、呼吸困難度(ボルグスケール)、酸素飽和度の変化などを測定します。
★特別な道具必要なく、安全で有効性が高い。 - シャトルウォーキングテスト(SWT)
9m離して置いたコーンの間(歩く距離は10mになる)をあるいて、徐々に歩くスピードを上げてもらう。スピードが間に合わなくなった時点で終了して、歩行距離を求めます。歩行距離から最大酸素摂取量(peakVO2)を計算することもできます。
★特別な道具が要らない。
筋力評価
下肢の筋力は、「歩行能力、活動能力」を決定する重要な因子です。
特に、大腿四頭筋力は可能な限り器具を用いて定量評価すべきです。
運動の処方の考え
持久運動の強度
- 持久運動は、嫌気性代謝閾値レベル付近で設定する。
- 訓練強度は、最大酸素摂取量(peekVO2)に対して60~80%を目標とする。
- 6分間歩行試験から運動設定する場合は平均歩行速度の80~90%を用いる。
- 症状の強い患者の場合はpeekVO2の40%前後を目標とすることもある。
下肢の運動の内容
運動は下肢の鍛錬を中心として、平地歩行、トレッドミル、エルゴメーターなどから選択します。
- 運動持続時間・・・15~30分
- 実施頻度・・・週3~5回
- 効果の目安・・・20セッション以上
上肢の運動内容
上肢運動は、呼吸困難を引き起こしやすい為、注意が必要。喚起に使う筋肉が、運動に使われてしまうため。
上肢運動は、座位で0.5~2㎏の重錘を前方あるいは、側方へ挙上する運動(2分を1セット)が推奨されています。
筋力トレーニング
栄養管理と合わせた筋力トレーニングは、四肢の筋力増加と持久力改善に役立ちます。実施速度がコントロールできるので、重症度にかかわらず積極的にとりいれるべきと考えられています。
下肢を中心に体幹、4肢に自重、重錘、ゴムバンドを使った運動を数種類実施します。呼吸器疾患に関係なく、1RMの60-90%で10~15回を1~数セット行います。
吸気筋の鍛錬(IMT:inspiratory muscle training)
『吸気筋の鍛錬(IMT)は吸気筋力の低下した患者のみ有効』とされます。(最大吸気力60㎝H2O以下)
IMTを行うには事前に、呼吸筋力の測定が必要です。呼吸筋力は、口腔内圧で測定するのが一般的です。
鍛錬法は、『吸気抵抗、閾値負荷(一定圧かけないと吸気できない状態にする)、過換気』などがあり、どれも効果に差がありません。閾値負荷に用いるスレッショルドが一番使われています。
リスク対策
運動療法は、身体に負担をかけるのでリスク管理が必要です。事前に重篤な合併症がないか確認します。
<合併症の確認>
- 心循環器系に重篤な合併症がないか
- 虚血性心疾患
- うっ血性心不全
- 肺高血圧症の合併
<運動中の監視>
- 酸素飽和度85%以下にしない
- 心拍数120/分以上にしない
- 必要に応じて酸素吸入を行う
- 呼吸困難評価も有用
- 呼吸困難度の負荷のコントロールに用いるときは、ボルグスケール2-3レベルを目標とする
パニックコントロール
運動慮法では、呼吸困難や酸素飽和度の低下が引き起こされることがあります。それを、適切に対処することを『パニックコントロール』といいます。
- 速やかに座位をとらせる(それが不可なら、壁にもたれる)
- 上体はやや前傾
- 座位なら手を膝の上やテーブルの上に置く
- 立位なら壁や手摺に手を置いて固定させる
- 閉塞性障害では口すぼめ呼吸
- 介助者は患者の側面・背面より呼気に合わせて呼吸を介助する
運動療法のプログラム
- 運動療法プログラムは入院ではなく、「外来実施」を基本とします。
- 「リラクセーション→下肢の持久運動、上肢運動(バランスよく30~60)→クールダウン」の順に行う。
- 運動負荷強度は、簡単なレベルから始めて最終的には、高強度を目標とする(初期トレーニング期間内に)
- 初期トレーニングの期間は、2~3ケ月として最低週2回の通院を原則とする。その期間は、家庭内でも毎日訓練をしてもらう。
- 重症患者は、NPPVを併用して行う
再評価と維持
初回は、運動療法の2~3ケ月後に「運動療法の効果を評価」をします。(それ以降は半年毎)
その結果により、プログラムを更新してより良いプログラムに更新します。
再評価は、「自覚症状、肺機能、酸素飽和度、ADL、QOL、6分間歩行試験、SWT」などが必要です。
運動療法の最大効果の発現まで2ケ月程度かかり、運動を中止してしまうと効果は速やかになくなる。したがって、家庭でのトレーニングプログラムが必須です。
家庭プログラムは、歩行を中心に行い、モチベーション維持のために、運動の効果を理解してもらう必要があります。
まとめ
運動療法の流れをもう一度、大まかに振り返っておきましょう。
- 運動の評価(持久力・筋力)
- トレーニング(持久力・筋力・吸気筋)
- リスク対策・パニックコントロール
- 運動療法のプログラムを決める
- 運動療法を実施して、評価する
まずは、一連の流れを抑えればオッケーです。
最近のコメント