リハビリテーション各論④(運動療法)

運動療法は、呼吸リハビリテーションで最も効果が確立されています。「評価、処方、トレーニング」で構成されます。

リハビリテーションの分野で最も重要な単元です。試験にもたくさん出題されますので、一通りの」項目をまとめました。

内容が多いので一気に覚えようとせずに、まずは「タイトル」になっているような重要な用語を覚えて、徐々に詳細の知識を足していくと良いです。

運動の評価

負荷試験の評価

  • 6分間歩行試験
    『室内の平坦なコースを6分間でできるだけ早く歩いてもらい、歩行距離を測定します。』
    同時に、呼吸困難度(ボルグスケール)、酸素飽和度の変化などを測定します。
    ★特別な道具必要なく、安全で有効性が高い。
  • シャトルウォーキングテスト(SWT)
    9m離して置いたコーンの間(歩く距離は10mになる)をあるいて、徐々に歩くスピードを上げてもらう。スピードが間に合わなくなった時点で終了して、歩行距離を求めます。歩行距離から最大酸素摂取量(peakVO2)を計算することもできます。
    ★特別な道具が要らない。
シャトルウォーキングテスト(SWT)

シャトルウォーキングテスト(SWT)

筋力評価

下肢の筋力は、「歩行能力、活動能力」を決定する重要な因子です。

特に、大腿四頭筋力は可能な限り器具を用いて定量評価すべきです。

運動の処方の考え

持久運動の強度

  • 持久運動は、嫌気性代謝閾値レベル付近で設定する。
  • 訓練強度は、最大酸素摂取量(peekVO2)に対して60~80%を目標とする。
  • 6分間歩行試験から運動設定する場合は平均歩行速度の80~90%を用いる。
  • 症状の強い患者の場合はpeekVO240%前後を目標とすることもある。

下肢の運動の内容

運動は下肢の鍛錬を中心として、平地歩行、トレッドミル、エルゴメーターなどから選択します。

  • 運動持続時間・・・15~30分
  • 実施頻度・・・週3~5回
  • 効果の目安・・・20セッション以上

上肢の運動内容

上肢運動は、呼吸困難を引き起こしやすい為、注意が必要。喚起に使う筋肉が、運動に使われてしまうため。

上肢運動は、座位で0.5~2㎏の重錘を前方あるいは、側方へ挙上する運動(2分を1セット)が推奨されています。

筋力トレーニング

栄養管理と合わせた筋力トレーニングは、四肢の筋力増加と持久力改善に役立ちます。実施速度がコントロールできるので、重症度にかかわらず積極的にとりいれるべきと考えられています。

下肢を中心に体幹、4肢に自重、重錘、ゴムバンドを使った運動を数種類実施します。呼吸器疾患に関係なく、1RMの60-90%で10~15回を1~数セット行います。

吸気筋の鍛錬(IMT:inspiratory muscle training)

『吸気筋の鍛錬(IMT)は吸気筋力の低下した患者のみ有効』とされます。(最大吸気力60㎝H2O以下)

IMTを行うには事前に、呼吸筋力の測定が必要です。呼吸筋力は、口腔内圧で測定するのが一般的です。

鍛錬法は、『吸気抵抗、閾値負荷(一定圧かけないと吸気できない状態にする)、過換気』などがあり、どれも効果に差がありません。閾値負荷に用いるスレッショルドが一番使われています。

スレッショルド

AXEL(https://axel.as-1.co.jp/asone/d/8-9859-02/)より引用

スレッショルドの使い方
  • 最大口腔吸気圧の30%にダイアルをセット
    (バネにより圧力負荷を調整できる)
  • 15分程度の吸気練習を指導する
  • 喚起パターンを崩さずに十分に吸気するように指導
    (かなりきつい努力が必要)
  • 1日2回、週5日以上の実施が標準

リスク対策

運動療法は、身体に負担をかけるのでリスク管理が必要です。事前に重篤な合併症がないか確認します。

<合併症の確認>

  • 心循環器系に重篤な合併症がないか
  • 虚血性心疾患
  • うっ血性心不全
  • 肺高血圧症の合併

<運動中の監視>

  • 酸素飽和度85%以下にしない
  • 心拍数120/分以上にしない
  • 必要に応じて酸素吸入を行う
  • 呼吸困難評価も有用
  • 呼吸困難度の負荷のコントロールに用いるときは、ボルグスケール2-3レベルを目標とする

パニックコントロール

運動慮法では、呼吸困難や酸素飽和度の低下が引き起こされることがあります。それを、適切に対処することを『パニックコントロール』といいます。

  • 速やかに座位をとらせる(それが不可なら、壁にもたれる)
  • 上体はやや前傾
  • 座位なら手を膝の上やテーブルの上に置く
  • 立位なら壁や手摺に手を置いて固定させる
  • 閉塞性障害では口すぼめ呼吸
  • 介助者は患者の側面・背面より呼気に合わせて呼吸を介助する

運動療法のプログラム

  • 運動療法プログラムは入院ではなく、「外来実施」を基本とします。
  • 「リラクセーション→下肢の持久運動、上肢運動(バランスよく30~60)→クールダウン」の順に行う。
  • 運動負荷強度は、簡単なレベルから始めて最終的には、高強度を目標とする(初期トレーニング期間内に)
  • 初期トレーニングの期間は、2~3ケ月として最低週2回の通院を原則とする。その期間は、家庭内でも毎日訓練をしてもらう。
  • 重症患者は、NPPVを併用して行う

再評価と維持

初回は、運動療法の2~3ケ月後に「運動療法の効果を評価」をします。(それ以降は半年毎)
その結果により、プログラムを更新してより良いプログラムに更新します。

再評価は、「自覚症状、肺機能、酸素飽和度、ADL、QOL、6分間歩行試験、SWT」などが必要です。

運動療法の最大効果の発現まで2ケ月程度かかり、運動を中止してしまうと効果は速やかになくなる。したがって、家庭でのトレーニングプログラムが必須です。

家庭プログラムは、歩行を中心に行い、モチベーション維持のために、運動の効果を理解してもらう必要があります。

まとめ

運動療法の流れをもう一度、大まかに振り返っておきましょう。

  1. 運動の評価(持久力・筋力)
  2. トレーニング(持久力・筋力・吸気筋)
  3. リスク対策・パニックコントロール
  4. 運動療法のプログラムを決める
  5. 運動療法を実施して、評価する

まずは、一連の流れを抑えればオッケーです。


コチラも合わせてどうぞ

看護師の転職先を探すには⇒看護師が転職する理由!迷ったときはどうすればいいのか?
呼吸療法試験の勉強法⇒3学会呼吸療法認定士の勉強法を解説します!