出産時に新生児の呼吸不全の原因となる代表的な疾患について紹介します。
『RDS(呼吸窮迫症候群)、MAS(胎便症候群)、PPHN(新生児遷延性肺高血圧症)、肺低形成』について順番に説明します。
目次(クリックすると移動します)
RDS(呼吸窮迫症候群)
RDSとは?
RDSはrespiratory distress syndromeの略称で、呼吸窮迫症候群のことをいいます。未熟児に発症しやすい疾患であり、肺胞が虚脱することにより、呼吸不全に陥ります。
原因は、肺サーファクタントという、肺胞の表面張力を弱めて、肺胞がつぶれるのを防ぐ物質が、妊娠34週以降に作り出されますが、早産では肺サーファクタンとが生成される前に出産してしまうからです。
RDSの診断には、羊水もしくは気道吸引物・胃内容物を用いたマイクロバルブテストにより診断します。
RDSの治療
RDSの治療の、第一は、酸素吸入や人工呼吸による喚起補助することです。十分に喚起が補助できている間に、サーファクタンとの生成が始まれば、4日程度でRDSは消失します。
RDSの直接的な治療法としては、サーファクタント補充療法というものがあります。これは、気管挿管をして人工呼吸器を装着したのちに、サーファクタントを直接投与する治療です。
MAS(胎便吸引症候群)
MASとは
MASとはmeconium aspiration syndromeの略称で、胎便吸引症候群のことをいいます。MASは名前の通り、胎児が羊水中の自分の便を吸引して肺が便で詰まることにより、出産後に呼吸不全を起こす疾患です。
原因としては、胎児が、母体内で強い低酸素血症に陥ると、喘ぎ呼吸が出現します。また、低酸素血症は、胎児の排便を促進してしまいます。
それらにより、羊水中の便を喘ぎ呼吸による大きな吸気で吸い込んでしまいます。
MASの治療
出産後に、MASが疑われる場合は、咽頭鏡直視下で気管内吸引をして胎便の除去を行います。
PPHN(新生児遷延性肺高血圧症)
PPHNとは
PPHNとは、Persistent. Pulmonary Hypertensionの略称で、新生児遷延性肺高血圧症のことをいいます。
母体内の胎児は、肺呼吸をしないため、肺動脈が狭窄されており、肺動脈の圧力が高い状態になっています。(詳細は胎児の循環参照)狭窄した肺動脈は、出産後に、酸素分圧の上昇に反応して、開放されます。
しかし、何らかの原因で肺動脈が狭窄したままであった場合は、肺動脈が狭窄したままになり、肺循環により、血液の酸素化が不十分になり呼吸不全となります。
PPHN治療
PPHNでは、強い低酸素血症に陥るため、直ちに喚起補助を行う必要があります。バッグマスク喚起から開始して、それでも不十分な場合は、人工呼吸器を装着した喚起補助を実施します。
血中酸素濃度が上昇すれば、それに反応して肺血管が広がり治癒しますが、改善しない場合は、一酸化窒素吸入療法(NO吸入療法)や体外式膜型人工肺(ECMO)を実施します。
肺低形成
肺低形成とは
肺は通常、成長と共に発達・機能分化が起こり、気管支は在胎16週頃には16分岐まで完了します。しかし、何らかの原因で成長が抑制されると、気管分岐が少ない肺低形成となります。
肺低形成の原因
- 先天性横隔膜ヘルニアにおける腹腔内臓器による圧迫
- 先天性嚢胞性肺疾患における嚢胞性病変による圧迫
- 胎児胸水による圧迫
- 用水過少による圧迫
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