開胸・開腹手術後の肺合併症④(循環の障害)

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循環の障害について

開胸・開腹後の合併症の種類は、4つに分類されます。今回は、その中の循環の障害について説明します。ちなみに、循環の障害となる疾患は「肺血栓塞栓症」のみです。

循環の障害

肺血栓塞栓症とは

肺血栓塞栓症とは、手術中や、術後などじっとしていて、動かないため、下肢の静脈血が滞留することにより、血栓ができやすくなります。

①原因

  • 原因の90%は下肢深部静脈で形成された血栓が、肺動脈に詰まることにより引き起こされる。

②病態

  • 肺動脈閉塞によるガス交換障害が生じる。初期は低酸素血症および、過換気による低二酸化炭素血症
  • 高度な(進行した)肺塞栓では、高二酸化炭素血症、肺動脈圧上昇、右心不全を引き起こす。

③診断

  • 突然の呼吸困難、呼吸促進、チアノーゼ、胸痛、冷汗
  • 重症では、意識消失、呼吸停止、ショック、心停止

④治療

  • まずはヘパリン投与(抗凝固療法)
  • 軽症、中等度であればウロキナーゼ大量投与
  • 重症例では、カテーテルまたは外科的血栓除去術

肺血栓塞栓症の予防

肺血栓症は、予防により発症率を大幅に下げることができます。患者のリスクに応じて適切な予防法を実施します。

ちなみに肺血栓塞栓症の危険因子は、「長期離床、うっ血性心不全、肥満、脱水、糖尿病、下肢静脈血栓症、経口避妊薬の常用」などが上げられます。

手術中は、長時間、動けないので、下肢の静脈血が滞留しないように、弾性ストッキングを着用することが効果的です。また、脱水により、ヘマトが上昇すると血栓ができやすくなるので、水分管理も大切になります。

術後においても、歩行ができるまでは、弾性ストッキングを着用すると共に、できるだけはやく離床することがポイントです。

以下の、「一般外科手術における血栓閉塞症予防のガイドライン」は、試験に頻出です。
リスク・一般外科手術・予防法の組み合わせを確認しておいてください。

[一般外科手術における血栓塞栓症予防のガイドライン]

リスク 一般外科手術 予防法
最高リスク群
  • 静脈血栓梗塞症の既往あるいは血栓性素因のある大手術
  • 低用量未分画ヘパリンと間欠的空気圧迫法または弾性ストッキングの併用
高リスク群
  • 40歳以上の癌の大手術
  • 間欠的空気圧迫法あるいは低用量未分画ヘパリン
中リスク群
  • 40歳以上あるいは危険因子がある大手術
  • 60歳以上あるいは危険因子のある非大手術
  • 弾性ストッキングあるいは間欠的空気圧迫法
低リスク群
  • 40歳未満の大手術
  • 60歳未満の非大手術
  • 早期離床および積極的な運動
(内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第11回集計結果報告ー、日本内視鏡外科学会雑誌、Vol.17,No.5,P.567,2012)

まとめ

「開胸・開腹手術後の合併症」についての説明は、このページでおしまいです。術後の合併症は、どのような種類があるのか、また、それぞれの合併症のポイントは理解できたでしょうか?

こちらの章の問題を、呼吸療法認定士の試験に準じて作成しています。よかったら、チャレンジしてみてください。

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開胸・開腹後の肺合併症クイズ


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