術後の肺合併症の一覧

肺

術後肺炎

術後肺炎とは、外科手術後に発症する肺炎です。原因となる菌としては「肺炎球菌、ブドウ球菌、クレブシエラ」などが多く、近年では「MRSA、緑膿菌」も増加しています。

 

無気肺

無気肺とは、肺の一部または肺全体がつぶれた状態です。開腹手術や開胸手術後の48時間以内に発症することが多いです。

また、開胸手術と比べて開腹手術後の発症率が高く、特に上部開腹手術後の発症率が高いので注意が必要です。無気肺を放置していると、肺炎に移行します。

 

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは、嚥下反射や意識低下などにより吐物や異物が気管内に流入することにより発症する肺炎です。吸引性肺炎と呼ばれることもあります。

 

術後肺水腫

術後肺水腫とは

術後に発症する肺水腫は、心臓が原因となる(心原生)肺水腫と、心臓が関係しない、非心原生肺水腫(ARDSなど)に分類されます。

心原生肺水腫では、心臓のポンプ作用の低下により、全身の血液が滞留することにより、右心不全となります。そうなると、肺毛細血管の圧力が上昇して、肺胞内に水が浸入します。肺胞内に水がたまると、ガス交換の能率が悪くなることはもちろんですが、肺胞のコンプライアンスも低下するため、進行するとひどい呼吸困難となります。

ARDSは、肺炎や敗血症、多臓器不全などに合併して急に発症します。ARDSでは、肺胞の透過性が行進することにより、肺胞内に水が浸入します。

術後肺水腫の治療

肺水腫の初期には、PaO2及び、PaCO2が低下します。PaCO2が下がる原因としては、息苦しさのため過換気になることが上げられます。たくさん換気して、CO2を排出しすぎるため、PaCO2が低下します。また、PaCO2が低下すると、pHは上昇します。

その為、肺水腫による、低酸素の治療では、まず、根本的な肺水腫に対する治療が必要です。肺胞内に水がたまった状態では、高濃度酸素を投与しても、PaO2は上がりにくい状態になっています。

心原生肺水腫に対する治療としては、心臓のうっ血を治療する必要があり、輸液を制限、利尿の促進、心機能の強化を行ないます。

利尿剤としては、フロセミド(商品名:ラシックス)などが使用され、心機能強化には、「血管拡張薬」や「カテコラミン(強心薬)」が使われます。

 

肺血栓塞栓症

肺血栓塞栓症とは

肺血栓塞栓症とは、手術中や、術後などじっとしていて、動かないため、下肢の静脈血が滞留することにより、血栓ができやすくなります。下肢で形成された血栓が、肺に流れ込んで肺の血管が詰まると肺血栓塞栓症となります。

治療は、外科的手術または、カテーテル治療により詰まっている血栓を除去・溶解します。また、再発予防の為に、抗凝固剤の点滴を実施します。

肺血栓塞栓症の予防

肺血栓塞栓症の危険因子は、「長期離床、うっ血性心不全、肥満、脱水、糖尿病、下肢静脈血栓症、経口避妊薬の常用」などが上げられます。

手術中は、長時間、動けないので、下肢の静脈血が滞留しないように、弾性ストッキングを着用するなどの予防が必要です。また、脱水により、ヘマトが上昇すると血栓ができやすくなるので、水分管理も大切になります。
術後においても、歩行ができるまでは、弾性ストッキングを着用すると共に、できるだけはやく離床することが大切です。

[一般外科手術における血栓塞栓症予防のガイドライン]

リスク 一般外科手術 予防法
最高リスク群 静脈血栓梗塞症の既往あるいは血栓性素因のある大手術 低用量未分画ヘパリンと間欠的空気圧迫法、または弾性ストッキングの併用
高リスク群 40歳以上の癌の大手術 間欠的空気圧迫法あるいは低用量未分画ヘパリン
中リスク群 40歳以上あるいは危険因子がある大手術
60歳以上あるいは危険因子のある非大手術
弾性ストッキングあるいは間欠的空気圧迫法
低リスク群 40歳未満の大手術
60歳未満の非大手術
早期離床および積極的な運動
(内視鏡外科手術に関するアンケート調査―第11回集計結果報告ー、日本内視鏡外科学会雑誌、Vol.17,No.5,P.567,2012)

 

(参考文献)

攻略2015呼吸療法認定士確かめドリル(日総研)