酸塩基平衡の指標

酸塩基障害を起こした場合、呼吸性か代謝性かを識別することが必要です。

呼吸性の指標としては、PaCO₂の値により判別することができます。それに対して、確実に代謝性酸塩基障害のみを反映する指標はありません。例えば、HCO₃⁻は、呼吸性と代謝性のどちらでも変化します。

その為、代謝性の障害は様々な検査や状態により総合的に評価する必要があります。今回は、代謝性の酸塩基障害を判定するための指標を紹介します。

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酸塩基障害の指標

HCO₃⁻

酸塩基平衡の指標ですが、呼吸性と代謝性の両方で変化するため、呼吸性と代謝性の判別には使うことができない。

BB,BE

BBは、buffer base(緩衝塩基)の略称です。緩衝塩基というのは、H⁺を中和したり排出する物質(アルカリ性にする物質)を言います。具体的には、「HCO₃⁻」と「H⁺と結合していない蛋白」の総量をBBといいます。

(HCO₃⁻は、H⁺と結合して体外に排出されます。また、蛋白はH⁺と結合して酸性を抑制する働きがあります。)

したがって、BBが体内に多いというのはアルカリ性にする物質が多いので体内がアルカリ性に移行している。反対に、BBが少ないというのはアルカリ性にするための物質が少ない(酸性に偏っている)と判断しまします。

ちなみに臨床では、BBという値ではなくBE(base excess:塩基過剰)という項目を用いります。

BEは、患者のBBから正常値(基準値)のBBを引いた値を表します。すなわち、BB(緩衝塩基)が正常値よりどの程度多いのかを表すものです。

BE=患者BB-正常BB

BEの正常値は、±2meq/Lであり、それより多い場合は代謝性アルカローシス、少ない場合を代謝性アシドーシスと判断します。ただし、BB、BEは、血液の緩衝系だけを考慮して、代償やHCO₃⁻の組織間液への移動の影響を関与していないません。BB、BEによる判定が必ずしも正確であるとは保証できません。

AG(アニオンギャップ)

AGは、実測できない陰イオン(乳酸、硫酸、酢酸などの共役塩基)の予測値を表す値です。乳酸、硫酸、酢酸などの共役塩基が増加するような代謝性アシドーシスの判定に使うことができます。

AG以下の式で求めることができます。

AG=(Na⁺+K⁺)-(Cl⁻+HCO³⁻)

なぜこの式で求めることができるのかは、以下のサイトに詳しく書いています。

参照:Doctor’sIllust Diary

AGの正常値は、10~12meq/Lであり、16meq/Lを超えると優位な代謝性アシドーシスと判断します。

ただし、下痢によるアシドーシスではAGは正常範囲となります。(下痢では、共益塩基は増加しない。アルカリ性物質である腸液の排出が増える為、アシドーシスとなる)全ての代謝性アシドーシスが判定できるわけでないので注意。

まとめ

  • HCO₃⁻(重炭酸イオン)は、呼吸性と代謝性で共に変化するので判定には使えない。
  • BEは、塩基過剰のことでアルカリ性の強さを表す。正常値±2
    (BE>2:アルカローシス、BE<-2:アシドーシス)
  • AGは、共益塩基の予測値を表す。代謝性アシドーシスの判定に用いる。
  • AG=Na⁺+K⁺)-(Cl⁻+HCO³⁻)
    (正常値10~12meq/L、16meq/L以上を代謝性アシドーシスと診断)

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