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PEEPとは
PEEPとは、positive end expiratory pressure の略称で、日本語訳で『呼気終末陽圧』といいます。名前のとおりに、人工呼吸器の呼気の終了時に回路内の圧力を0mmHgにせずに、呼気の終わりにも一定の陽圧をかけたままにします。

PEEPは、単独で使用される換気モードではなく、他の換気モードに付属して設定する項目です。調節換気のVCV,PCVや、補助換気のVSV,PSV,CPAPなどの換気モードの設定項目の一つになっています。
以下の画像は、サーボiのVCVモードでの、設定項目の一覧です。このように、PEEPは、換気モードと併用して用いられます。ちなみにPEEPだけをかけ続けるという換気モードは、CPAPという換気モードがあります。

PEEPの効果
呼吸仕事量の軽減
PEEPを設定すると、気道内圧が一番低下する呼気終末においても陽圧をかけます。それにより、呼気終末時においても肺胞が完全につぶれません。
完全につぶれた、肺を膨らますのは大きな力が要りますが、PEEPにより、ある程度膨らましていると、簡単にふくらますことができて呼吸仕事量が軽減します。
肺保護
適切なPEEP圧をかけることに、ズリ応力による肺障害から肺を保護することができます。
機能的残気量の上昇
PEEPをかけると、肺内の平均ボリュームが上昇することにより、FCR(機能的残気量が上昇します。)FCRは、予備呼気量と残気量の総和です。
予備呼気量とは、努力して吐き出せる空気の量です。PEEPにより、肺内の平均ボリュームが上がるので、吐き出せる空気の量すなわち予備呼気量が上昇します。FCR=予備呼気量+残気量 ですので、FCRも上昇するのが分かります。
PEEPの副作用
PEEPは、いい点だけではありません。気管内の平均気道内圧が上昇することにより、下記の臓器に障害が起こる可能性があります。
循環器
循環器に対する副作用としては、心拍出量の減少が起こります。
原因としては、PEEPによる、気道内圧の上昇により、胸腔内圧が上昇します。胸腔内圧が上昇すると、心臓が圧迫されます。
特に心臓内で圧力が低い右心房が圧迫されて右房圧が上昇します。右心房は、心臓から全身に拍出された血液が、最終的に帰ってくる部屋です。ここの圧力が上昇すると、全身からの静脈圧が戻ってきにくくなり、血液うっ血が起こり、心拍出量が低下します。

腎臓
腎臓に対する副作用としては、尿量の減少があります。
腎臓での尿の生成は、腎臓の糸球体により、血液の圧力を駆動原としてろ過して生成しています。すなわち、心拍出量が低下して、血圧が低下すると、尿の生成が低下します。
脳
胸腔内圧の上昇は、直接的に脳圧を上昇させます。脳圧の上昇は、頭痛や嘔吐の症状を引き起こしたり、脳ヘルニアを起こす恐れもあります。
肺
肺に対して過度な圧力がかかると、肺胞破裂、気胸、気腫などの肺損傷を引き起こします。
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