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酸素療法による吸入酸素濃度の目安は?
酸素吸入療法には、鼻カニューラ、簡易酸素マスクなどによる低流量システムによる酸素投与とベンチュリマスクやネーザルハイフローなどのように多量の酸素を流す、高流量システムに分類されます。
それぞれの、方法により設定可能なFiO2(吸入酸素濃度)が異なります。今回は、それぞれの酸素療法の特徴と吸入酸素濃度の目安について簡単に紹介します。
低流量システム
鼻カニューラ
鼻カニューラは、両側の鼻腔にカニューラを装着して、鼻腔より酸素を供給する方法です。カニューラが安価であり、簡便に実施できるのが最大の長所です。
欠点としては、高流量の酸素を鼻腔に流すと、鼻の粘膜に酸素が直接ぶつかり痛みが出ます。そのため、流量をあまり高くすることができません。吸入酸素濃度は、呼吸回数や1回換気量により変化しますが、流量と吸入酸素の目安は、以下のようになります。
酸素流量[L/分] | 吸入酸素濃度の目安[%] |
0 | 20 |
1 | 24 |
2 | 28 |
3 | 32 |
4 | 36 |
5 | 40 |
6 | 44 |
流量を1L上げるごとに、吸入酸素濃度が約4%ずつ上昇すると覚えておけばいいでしょう。
簡易酸素マスク

簡易酸素マスクは、口と鼻を覆って酸素を吸入するためのマスクです。簡易酸素マスクでは、マスク内に溜まった呼気ガスを再吸入しないために、酸素流量を5L/分以上に設定する必要があります。その為、40%以下の低濃度酸素の吸入をすることができないといった欠点があります。患者の呼吸方法により、吸入酸素濃度も変化するため、細かな吸入酸素濃度を設定することもできません。
酸素流量と吸入酸素濃度の目安を以下に紹介します。
酸素流量[L/分] | 吸入酸素濃度の目安[%] |
5~6 | 40 |
6~7 | 50 |
7~8 | 60 |
オキシアーム

(株式会社MPIのHPより引用)
オキシアームとは、鼻や口に直接接触させないように酸素を供給させる方法です。鼻カニューラのように粘膜の刺激が少ないなどの長所があります。ただ、それほど広まっておらず、個人的には見たことがありません。
オキシアームでの吸入酸素濃度の目安は以下のようになります。
酸素流量[L/分] | 吸入酸素濃度の目安[%] |
1 | 21~27 |
2 | 28~31 |
4 | 32~35 |
6 | 36~39 |
8 | 40~43 |
10 | 44~47 |
リザーバ付き酸素マスク

(独立校生法人環境再生保全機構HPより)
リザーバ付き酸素マスクとは、マスクにリザーバ―と呼ばれる袋が装着されます。この袋の中に、酸素ガスをためることができる為、吸入できる酸素ガスの量が増えるため、高濃度の吸入酸素濃度を得ることができます。
リザーバ―の容量は、600~1000mlの容量があります。たまに、リザーバ―マスクを使用している患者で、リザーバ―が膨らんでない方を見かけます。膨らんでいないと、リザーバ―マスクの意味がないので、きっちり膨らませてあげることが大切です。
ちなみに、リザーバ―付き酸素マスクは、リザーバ―内の酸素のみを吸入させるために、リザーバ―とマスクの間、マスクの左右の穴に一方弁がついています。
リザーバ―付き酸素マスクによる吸入酸素濃度は以下のようになります。
酸素流量[L/分] | 吸入酸素濃度の目安[%] |
6 | 60 |
7 | 70 |
8 | 80 |
9 | 90 |
10 | 90~ |
高流量システム
高流量システムは、患者に対して一定の吸入酸素濃度を提供するために考えられた酸素療法です。健常者の通常の吸気における平均吸気流量は30L/分になります。
その為、吸入気の酸素濃度を一定に保つためには、30L/分以上の酸素ガスを流す必要があります。このような、大量の酸素ガスを流して、一定の吸入酸素濃度を保つ酸素療法を高流量システムといいます。
ベンチュリマスク

ベンチュリマスクは、ベルヌーイの原理に基づくヴェンチュリ効果を利用して高流量の酸素ガスを流す器具です。ヴェンチュリ効果とは、下の図のように管の途中を細くすることにより、細い部分の流速が高くなります。
流速が上がると外気が引き込まれて、酸素と外気が合わさった高流量の酸素ガスを流すことができます。このように、配管の酸素と、外気の空気を取り込む量により、吸入気酸素濃度を一定に設定することができます。空気の取り込む量を上記のカラフルな器具を差し込むことにより調整します。

病院の配管による酸素流量の限界は、15L/分程度です。したがって、高流量のガスを取り込むためには、空気を混ぜます。その為、ベンチュリマスクでは、高濃度の酸素を供給することはできません。
細かな濃度の設定は、器具により、空気を取り込む量を調整して設定します。ベンチュリマスクにより供給できる吸入気酸素濃度は、24~50%程度の範囲となります。
ネーザルハイフロー

(Fisher&Paykel HEALTHCAREのHPより)
ネーザルハイフローは、鼻カニューラにより30~60L/分の高流量の酸素ガスを供給する酸素療法です。従来の、鼻カニューレによる酸素療法は、鼻腔の損傷を防ぐために6L/分以下の流量で設定する必要がありました。
ネーザルハイフローでは、酸素ガスを加温加湿器により加湿・加温することで高流量の酸素ガスを流しても鼻腔に負担がかからないようにしています。
ネーザルハイフローでは、高流量の酸素ガスを流すため、一定のFiO2を保つことができます。また、酸素ブレンダにより20~100%まで細かな酸素濃度の設定が可能です。ネーザルハイフローについての詳細は別の項にまとめているので参照してください。
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