新生児・乳幼児の呼吸管理方法の実際
酸素療法
高二酸化炭素血症を伴わない軽度の低酸素血症の場合、ベッドボックスや保育器内に酸素を投与します。
新生児では、未熟児網膜症や慢性肺障害の危険を予防するためPaO250~80㎜Hgに保つ最小限の酸素を使用します。
吸入酸素濃度が40%超える場合や沈没呼吸がある場合は、慢性肺障害を引き起こす可能性がある為、nasal-CPAPや挿管下人工呼吸に切り替えます。
息を吸い込むときに、胸の一部が陥没する呼吸のこと。
nasal-CPAP
太めの鼻カニューレを挿入して、陽圧回路に接続することで、持続性気道陽圧をかける方法。
CPAPでも吸入酸素濃度が40%以上必要な場合やPaO2が高値の場合は挿管による人工呼吸を行います。
ネーザルハイフロー酸素療法
鼻腔カニューレから、患者の吸気量に匹敵する加湿された酸素を流す酸素療法です。
高流量の吸気ガスで死腔内のCO2を洗い出して(フォッシュアウト)、CO2の再呼吸を減らすことができます。また、その為には鼻孔サイズよりも細い径のカニューラを使います。
鼻カニューラが細いので、鼻損傷が少なく患児も嫌がりにくいメリットがあります。欠点は、回路が高価であり、大量の酸素が必要になります。
※画像
人工呼吸療法
<TCPL:time-cycled pressure-limited ventilation>
「回路内に定常流が流れて患者は自由に自発呼吸ができる。さらに、間欠的に呼気弁が閉鎖して強制換気が行われる。」という呼吸モード
定常流がたえず供給されて、トリガーなしでも喚起できるので、呼吸仕事量が少なくなります。
- 吸入酸素濃度
新生児:PaO2を50~80mmHg
乳幼児:PaO2が100mmHgを越えない最小限の酸素濃度 - PEEPの設定
RDS、肺炎(呼吸コンプライアンスが低下した疾患)の場合:5~10cmH2O
気管軟化症や喉頭軟化症の場合:8~10㎝H2O
胎便吸引症候群など、閉塞性呼吸器疾患の場合:1~3㎝H2O - 最高吸気圧の設定
通常:PaCO2が40~60mmHgを保つ範囲でできるだけ低く設定
1500g以下の極低出生時の場合:20㎝H2O以下 - 喚起回数の設定
呼吸コンプライアンスが低下した疾患:30~40回/分
閉塞性呼吸器疾患:20~30回/分より開始 - 吸気時間の設定
急性期:0.5~0.8秒
ウィニング時:0.3~0.4秒
これらの条件でPaCO2が60mmHg以下を保てない場合は、「HFO、サーファクタント補充療法」を考慮します。
<補助換気(PTV:patient trigger ventilation)>
患者の努力呼吸に同期して喚起を行うモード。
自発呼吸がないと使用できない。また、ファイティングを起こしやすい患者やウイニングの際に有効です。
<高頻度振動換気法(HFO:high frequency oscillation)>
一定の気道内圧で、少量のガスを高頻度(10~15Hz)に出し入れすることにより喚起を行う方法
〔新生児の設定方法〕
- 喚起回数:10~15Hz(1分あたり600~900回)
- PaO2を上げる場合:吸入酸素濃度か平均気道内圧を高くする
- PaCO2を下げる場合:1回換気量を大きくする
特殊な呼吸管理法
<サーファクタント補充療法>
肺サーファクタントを補充してRDSの治療を行う方法。急性呼吸不全や気胸・慢性肺障害にも有用とされます。
<NO吸入療法>
一酸化炭素を吸入して、肺血管平滑筋細胞内のc-GMPを増加させ、肺血管のみ膨張させる治療
保険適応:新生児遷延性高血圧症
人工呼吸療法や血管拡張剤では酸素化指数を20未満に下げられない場合に施行を検討する。
〔問題点〕
- NOと酸素が結合してできる、有毒ガスNO2による肺障害
- 室内拡散による医療従事者への汚染
- メトヘモグロビン血症
- 血小板機能の低下
- リバウンド現象
- 倫理面の問題
<体外式人工心肺(ECMO)>
人工呼吸療法で有効な酸素化や喚起が得られない場合や肺を休めて肺損傷を回復させる治療。
- VA方式:総頸静脈や右心房より脱血し、頸動脈より送血する。
- VV方式:下大静脈から脱血し右心房に送血する。
- 抗凝固剤:送血路でACTが180~200秒になるようにフサンかヘパリンを持続挿入する。
〔適応〕
- 酸素化指数(OI)が40以上が4時間以上続く場合
- phが7.15未満でPaCO2が40mmHg未満
- エアリークがあるがMAPを15㎝H2O以下に下げられない場合
〔禁忌〕
- 在胎週数35週未満
- 修正体重2000g未満
- 頭蓋内出血
- 人工換気10日以上
- 不可逆的肺損傷
- 予後不良の合併症や先天性奇形
〔合併症〕
- 空気塞栓
- 血栓
- 出血傾向
- 感染
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