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ネーザルハイフローとは
ネーザルハイフローのネーザル(nasal)とは日本語で『鼻の』という意味です。ハイフローは、『高流量』です。したがって、ネーザルハイフローとは、『鼻に高流量』という意味になります。
ただ、ネーザルハイフローというのは、正式な治療名ではありません。ネーザルハイフローというのは、fisher&paycel healthcare社の商品名であり、一般名としては、ハイフローセラピーなどと呼ばれます。
話がそれましたが、ネーザルハイフローとは、鼻カニューレにより高流量の酸素を流す酸素療法です。従来、鼻カニューレでは、高流量の酸素を流すと鼻腔内が乾燥して、痛みが出る為、鼻カニューレの酸素投与量は6L/分以下の低流量で実施するのが常識でした。
その為、鼻カニューレで酸素を投与した場合の、吸入酸素濃度は、20~40%程度が限界であり、また患者の呼吸の仕方により吸入酸素濃度が変化していました。
それに対して、ネーザルハイフローでは高流量(30L/分以上)の酸素を流します。そのまま流すと、鼻腔が乾燥してしまうので、加温加湿器などで加温加湿した酸素を投与します。
回路自体は、とてもシンプルで単純な為、初めて業者が売りに来たときは、『こんなの効果あるのか?馬鹿にしているのか?』とあまり、期待されませんでした。
半信半疑で使い始めましたが、これがとっても効果があり、各学会で有効性がたくさん報告され、現在では様々な病院で導入されています。
診療報酬については、他の酸素療法と同様の為、コストがかかってしまいますが、次回の診療報酬改定では、ネーザルハイフロー独自の診療報酬が設定される予定だそうです。
ネーザルハイフローの構成

(http://www.myoptiflow.com/#gsc.tab=0より引用)
鼻カニューラ
酸素を患者さんに供給させるチューブです。酸素ガスの流量が多いので通常の鼻カニューラより太くなっています。

(http://www.fphcare.com/respiratory/adult-and-pediatric-care/optiflow/より引用)
酸素ブレンダ
配管から供給される酸素と圧縮空気を混合して酸素濃度を調整します。

(石川メディカル株式会社HPより引用)
加温加湿器
加温加湿器は、酸素ガスを加温加湿させる為の機械です。人工呼吸器と同様の加温加湿器が使われます。

ネーザルハイフローの特徴・長所
1.一定の吸入酸素濃度に設定できる
高流量のガスを流すため、簡易酸素マスクや経鼻酸素のように供給される酸素ガス以外の室内空気を吸わない。したがって、流す酸素ガス濃度とほぼ同等の吸入酸素濃度(FiO2)に設定することができます。ちなみに、酸素濃度を20~100%まで設定できます。
2.CO2の再呼吸がない
高流量の酸素ガスを流すため呼気の再吸入がない。
3.解剖学的死腔に溜まった呼気の洗い流し効果
高流量の酸素ガスを流すことで鼻腔頭などに溜まった呼気を洗い流し解剖学的死腔を減らす効果があります。
4.会話,食事が可能
鼻にチューブを装着するので、会話したり食事・飲水することが可能であり、患者のQOLを上げることができます。
5.PEEP効果
高流量のガスを流すので口を閉じて吸入すると軽度のPEEP効果が期待できます。(※リンク挿入)
6.粘膜繊毛クリアランスの最適化ができるらしい
ネーザルハイフローの適応
ネーザルハイフローは、あくまで高濃度の酸素を供給する治療であるので、PaO2のみが低下するようなⅠ型呼吸不全が適応となります。人工呼吸器やNPPVのような喚起を補助する働きはないので、PaCO2が上昇するような、Ⅱ型呼吸不全には使用できません。
まとめ
ネーザルハイフローでは、高濃度酸素ガスを供給しつつ、食事したり会話することが可能であるので、患者のQOL向上にとても有効な治療方法だと思います。
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