今回は、人工呼吸中の感染症のモニタリングについて勉強します。「感染症のモニタリング項目」と、人工呼吸中に発生する重大な感染症である「VAP」について理解しましょう。
目次(クリックすると移動します)
全身感染症のモニタリング
感染症のモニタリング項目
- 白血球・白血球分画・CRP
- 血中エンドトキシン
- 喀痰・口腔内分泌物培養
- 胸部エックス線・胸部CT
まずは、どのように感染症をモニタリングするかです。
白血球・CRPについては、基本の感染症の検査です。普段の健診でも頻繁に検査しますね。感染症になるとこれらの値は上昇します。
次に、エンドトキシンというのは、グラム陰性細菌の細胞壁の一部です。体内に侵入すると、発熱や炎症反応を引き起こします。エンドトキシンの値で、グラム陰性細菌感染症の発症を調べることができます。
喀痰・口腔内分泌物培養というのは、感染症の原因菌を特定するために行う検査です。採取した分泌物を培養(増殖させる)することにより肉眼でも確認できるようになり菌の種類が特定できます。
胸部エックス線では、肺の炎症がわかります。一般的に炎症になると陰影が大きくなります。
人工呼吸器関連肺炎
VAPとは
VAPとは、ventilator associated pneumoniaの略称です。日本語に訳すと、人工呼吸器関連肺炎となります。
VAPの定義は、「人工呼吸開始48時間以降に発症する肺炎で、人工呼吸器装着前には肺炎が存在しなかったもの」となります。ようは、人工呼吸器の装着が原因で発症した肺炎ということです。
このVAPは、ICUにおける院内感染症で最も発生頻度が高い感染症です。
VAPの現状
VAPの発生率は、ICUにおいて収容患者の3~4%に発症するといわれています。VAPの感染は、呼吸状態をさらに悪化させて患者の死亡率を高めたり、入院期間を延長させます。したがって、人工呼吸中に最も注意しなければならない感染症ということです。
VAPの原因と危険因子
・原因
VAPの原因は、吸引時の不潔操作や誤嚥などです。特に、口腔内貯留物の誤嚥がもっとも重大な原因といわれています。
早期型VAPの原因菌としては、黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、晩期型VAPの原因菌は、緑膿菌、肺炎桿菌、セラチア菌(多剤耐性グラム陰性桿菌)
・危険因子
患者因子:高齢、悪性腫瘍患者、免疫抑制状態、慢性肺疾患、外傷
介入因子:長期の人工呼吸器装着、頻回の人工呼吸器交換、PEEPの未使用、仰臥位
予防法
- 器具を汚染させない
- 誤嚥を防ぐ
- 人工呼吸器の装着期間を短くする
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