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陽圧喚起の影響
人工呼吸による陽圧喚起を行うと、胸腔内圧が上昇します。

胸腔内圧の上昇は、循環器にとって以下の影響を与えます。イメージしながら理解していきましょう。流れをつかむと忘れにくくなります。

上の図を説明しますね。
①人工呼吸器は、直接的に肺にガスを送り込む陽圧喚起です。
②陽圧喚起は胸腔内圧を上昇させます。胸腔内圧が上がると、もともと圧力の低い右心房に影響を与えます。圧迫された右心房圧は、右心房内の圧力が上昇します。右心房圧が上昇すると、それに繋がる上・下大静脈の抵抗が上がり全身からの血液還流が低下します。
③過度に膨らんだ肺は、肺の動静脈の毛細血管を圧迫する為、肺血管の抵抗が上昇します。(肺血管の血流が悪くなります。)
④肺血管の抵抗が上昇したことにより、右心室がより頑張らなければ血液を肺に送りにくくなります。(後負荷の意味は、下で説明します。)
- 胸腔内圧上昇⇒右心房圧上昇⇒上下大静脈の抵抗上昇⇒血液還流の減少⇒心拍出量減少
- 肺内圧上昇⇒肺動脈抵抗上昇⇒右心室拍出量低下⇒心拍出量低下
循環系のモニタリング
循環器の基礎用語確認
循環器の学習でよく出てくる、前負荷・後負荷の意味を確認しておきましょう。
- 前負荷・・・前負荷というのは、心室が収縮する直前の負荷のことです。状態としては、心房から心室に血液が慣れてきて心室が最も膨らんでいる状態の負荷です。心室が大きく膨らむほど前負荷は大きいと言えます。前負荷というのは必ずしも悪いというわけではありません。血液を十分に拍出するには、一定の前負荷が必要だということです。
- 後負荷・・・後負荷というのは、心室が収縮した直後にかかる負荷です。心臓から血液を全身に送るには、全身の動脈の圧力に打ち勝つ力で血液を拍出しなければなりません。その負荷を後負荷といいいます。上の画像(④)でも説明しましたが、肺血管抵抗が上がると、より強い力で右心室が収縮しなければ血液を拍出することができなくなるので、右心室の後負荷が増加すると説明できます。
ようは、前負荷、後負荷というのは、心室の収縮に対して前か後かということです。
心拍出量減少の原因
- 前負荷の異常
心拍出量が低下するのは主に、前負荷が下がりすぎる場合です。前負荷というのは、心室が拡張している状態の負荷です。この心室が膨らまなくなる原因は、輸血量不足・出血・脱水など循環血液量(体の血液量)低下が原因です。その他、出血、人工呼吸器による陽圧喚起も、循環血液量を下げるので前負荷の低下の原因と言えます。(前負荷が上がりすぎる場合も、心拍出量が低下します。うっ血性の右心不全などです。) - 後負荷の異常
心拍出量が低下するのは、主に、後負荷が増加した時です。肺高血圧症、動脈硬化など動脈の抵抗が上がると、後負荷が増大しますね。 - 心筋収縮力低下
心筋収縮力低下の原因は、高カリウム血症・低酸素血症・心筋虚血・代謝性アシドーシスです。代謝性アシドーシスというのは、腎臓から酸の排出が低下して体が酸性に傾くことです。 - 心拍数低下
いろいろと原因がありますが、ようは心拍出量は、「一回拍出量×心拍数」で決まります。それに影響する原因が心拍出量減少の原因ということです。この根本さえ理解していれば試験でみたことがない選択肢が出題されても想像して回答できるはずです。
モニタリング方法
心拍出量のモニタリング方法をいかに紹介します。どのような関係性があるのか理解しておきましょう。
- 右心系の前負荷・・・中心静脈圧
- 左心系の前負荷・・・肺動脈楔入圧
- 右心系の後負荷・・・肺血管抵抗
- 左心系の後負荷・・・体血管抵抗(抹消動脈抵抗)
- 心筋収縮力・・・心臓超音波検査など
- 心拍数
循環器の管理方法
心拍出量低下時の手順
- 心拍出量の低下が見られたら、心電図を確認します。心電図に異常があれば、それに対する治療をします。
- 心電図と並行して、中心静脈圧・肺動脈血入圧も測定します。
- 中心静脈圧・肺動脈楔入圧が低下している場合は、循環血液量の減少が疑われるので輸液・輸血を行います。
- 中心静脈圧・肺動脈血入圧が上昇している場合は、ジキタリスやカテコラミンを投与します。さらに、うっ血症状があれば、血管拡張薬・利尿薬を投与、末梢血管抵抗が高い場合は、血管拡張薬を投与します。
薬剤の特徴
- カテコラミン
ドパミン、ドブタミン、アドレナリン、ノルアドレナリンなど
心筋収縮力を上げて、心拍数を上昇させる。アドレナリン、ノルアドレナリンは抹消動脈を収縮させるので後負荷が増大するのには注意が必要。 - ジキタリス
ジキタリスは中毒に注意が必要。カリウム値を定期的に測定する。 - 血管拡張薬
血管拡張薬は、血管を広げて血管抵抗(後負荷)を下げることにより楽に血液を送りやすくする薬。心拍出量は増えるが、血圧は低下する。 - 利尿薬
ループ利尿薬(フロセミド[ラシックス])では、低カリウム血症などの注意が必要。
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