第20章では、人工呼吸中の集中治療について勉強していきます。
まずは、集中治療の勉強の前に、人工呼吸中の患者さんはどのような病態なのかということを学んでいきましょう。病態が分かれば、今後、どのような点に注意して看護・治療していけばいいかわかりますね。
人工呼吸中患者さんは、以下の3つの影響による病態に注意が必要です。それらによりどのような影響を受けるのかを理解しましょう。
- 低酸素血症による影響
- 陽圧喚起による影響
- 人工呼吸器装着による影響
それぞれについてもう少し詳しく学んでいきます。
目次(クリックすると移動します)
人工呼吸中の患者の病態
低酸素血症による影響
まずは、様々な原因が元で低酸素血症になり人工呼吸器を使っています。低酸素血症というのは、血液中の酸素濃度が低下した状態です。
酸素は、ブドウ糖と化学反応を起こして、水と二酸化炭素に分解されます。この化学反応でエネルギーを作り人間の体は動いています。
酸素不足になると、それぞれの臓器を動かすためのエネルギーが不足するため、心臓・腎臓・肝臓など重要な臓器の働きが悪くなります。
低酸素血症→臓器の酸素供給低下(臓器の機能低下)→[心機能障害、意識障害、急性腎不全、肝機能障害]
したがって、人工呼吸中は、これらの重要臓器に障害が出ていないか常に注意しながら観察しなければなりません。
陽圧喚起による影響
呼吸状態を改善するために行う人工呼吸器ですが、人工呼吸そのものが呼吸状態を悪くする副作用もあります。
人工呼吸というのは、無理やり空気を肺の中に送り込む陽圧喚起という方式です。
無理やり空気を送り込むので、自然な呼吸に比べて「気管、肺、胸腔」内の圧力が上昇します。圧力が上がって何が困るかというと、心臓の働きが悪くなります。
なぜ心臓が悪くなるかというと、心臓は肺のすぐそばにあるからです。

胸腔の圧力が上がると、心臓にまで圧力が加わってしまいます。心臓の中でも、圧力の低い右心房が影響を受けます。
右心房は、全身に拍出された血液が戻ってくる部屋です。ここの圧力が上がると、全身に送られた血液が心臓に戻ってきにくくなります。右心房の圧力が上がるというのは、右心房の手前に邪魔者があらわれる
というのをイメージしてください。

そうなると血液が心臓に戻ってきにくくなりますね。すなわち、血液がうっ滞してしまいます。うっ血性心不全のような状態になるわけです。
内経静脈は、頭の血液が流れる静脈なので脳の圧力が上昇して脳ヘルニアの危険性があります。
(右心房→上大静脈→腕頭静脈→内頸静脈,鎖骨下静脈という流れになっています)
人工呼吸器装着による影響
人工呼吸では、直接的に気管に管を入れる為、呼吸回路の汚染や口腔咽頭の病原性微生物などが誤嚥され肺炎を引き起こす恐れがあります。
特に、人工呼吸装着装着から48時間内に発生した肺炎をVAP(人工呼吸器関連肺炎)と呼び、死亡率増加や在院日数延長を引き起こすと報告されています。
まとめ
人工呼吸中の患者は、①低酸素血症による重要臓器の障害、②陽圧喚起による心拍出量低下、脳圧上昇③肺炎ついても注意が必要ということを紹介しました。
人工呼吸中は、肺機能だけを観察するのではなく全身状態を観察しなければならないということが分かったと思います。
次からは、人工呼吸中の管理方法を説明します。
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