低酸素血症の原因

低酸素血症とは、SaO2(動脈血酸素飽和度)やPaO2(動脈血酸素分圧)が低下した状態をいいます。

今回は、どのようなときに低酸素血症になるのかについて紹介します。3学会合同呼吸療法認定士の試験でも低酸素血症になる状態について選択する問題が出題されるのでしっかり理解しましょう。

低酸素血症の原因

低酸素血症の原因は、肺胞低換気、拡散障害、喚起血流比の不均等の3つに分類されます。喚起血流比の不均等、拡散障害は、これまでにも何回も学習したので復習のつもりで読み返してください。

肺胞低換気については、新しく学びますのでしっかりと説明します。

低酸素血症のゲインイン

低酸素血症の原因

肺胞低換気(喚起障害)

肺胞低換気とは?

肺胞低換気というのは、吸い込む空気の量と吐き出空気の量が減少することです。すなわち、ガスの交換量が減少することです。

換気量の指標としては、分時換気量というものがあります。これは、1分間の換気量のことなので「1回換気量×呼吸回数」で表されます。1回換気量、呼吸回数のどちらかが減少すると肺胞低換気となります。

また、換気量が減るということは排出するCO2の量も減るので、PaCO2も増加します。換気量とPaCO2は反比例の関係にあります。

したがって、PaCO2は換気量の目安としても臨床で用いられます。

肺胞低換気の代表疾患

呼吸は、無意識に行われています。これは、延髄の呼吸中枢によりコントロールされているためです。呼吸中枢は、抹消化学受容体や中枢化学受容体からの刺激を受けて、呼吸筋・横隔膜を動かす命令を送ります。

呼吸の刺激伝導路

呼吸中枢から呼吸筋への刺激伝導路

呼吸のコントロールは、これらのネットワークにより無意識に調整されます。したがって、これらのどの部分であっても障害があると呼吸に障害が現れます。

肺胞低喚起となる具体的な疾患は、以下のものがあります。

  1. 呼吸中枢の抑制
    脳幹部障害,Ondine’s Curse,原発性肺胞低換気,睡眠時無呼吸症候群,甲状腺機能低下,呼吸抑制剤
  2. 中枢化学受容体の抑制
    代謝性アルカローシス(低K+性アルカローシスでは(-))
  3. 脊髄刺激伝導路の障害
    脊椎・脊髄損傷,脊髄炎
  4. 脊髄前角細胞の障害
    筋委縮性側索硬化症,ポリオー
  5. 末梢神経炎
    ギランバレー症候群,ジフテリア,ポルフィリン尿症
  6. 神経・筋接合部の障害
    重症筋無力症,パラチオン中毒
  7. 呼吸筋障害
    進行性筋ジストロフィー,筋委縮性ジストロフィー,膠原病

それぞれの疾患において、刺激伝導路のどの部分が障害される疾患なのかを意識しながら覚えてください。

ガス交換障害

喚起血流比不均等

喚起血流比というのは、換気量と血流量の比率のことです。肺胞で、効率よくガス交換をするためには換気量と血流量がそれぞれ十分にあることが必要です。V/Q比=0.8がもっとも効率よくガス交換ができる数値です。

どちらかが、極端に少なかったり、おおきかったりすると効率よく血液を酸素化することができません。

喚起血流比のイラスト

喚起血流比の不均等には、いろいろなパターンがあるのでそれぞれのパータンを説明します。

シャント様効果の画像
例えば、上の図では、血流が十分にありますが肺胞のふくらみが小さくガスの交換量が少ないです。(シャント様効果)このような、肺胞を流れる血流はすべての血液を十分に酸素化することができません。

 

真性シャントの説明画像

上の図は、さらに換気量が減少した肺胞の図です。このように完全に閉塞した、肺胞は真性シャントといいます。

肺内のシャントが増加すると、高濃度の酸素を投与してもPaO2はなかなか増加しにくい状態になります。なぜなら、シャントというのは、ガスを血液に移動できなくなる疾患だからです。このような場合は、シャントを減らすような治療が必要となります。

シャントになる具体的な肺疾患としては、「気道の完全閉塞、肺胞の虚脱、肺水腫、肺動静脈奇形」があります。

肺動静脈瘻とは、肺動脈と肺静脈に、異常な吻合があるために、肺胞をバイパスして血液がながれてしまう状態です。そのため、静脈血の酸素化が効率よく行えないため、低酸素血症に陥ってしまいます。

肺動静脈瘻の原因の50%は、先天性であり遺伝性出血性毛細血管拡張症により発症します。後天性で発症する原因としては、肝硬変や外傷などがあります。

肺胞死腔の画像
上の図では、肺胞は正常ですが肺胞に流れる血液が少ししかありません。これでは、少量の血液しかガス交換ができません。

このようにほとんど血流が流れていないような肺胞(V/Q比=無限大)のことは、肺胞死腔といいます。

拡散障害

拡散というのは、濃度あるいは分圧の高い領域から低い領域へ濃度差に従って分子が移行する現象です。肺での酸素と二酸化炭素のガス交換は、拡散により行われています。

肺胞の拡散の画像

肺の病変などにより、拡散がスムーズにできなくなる状態を拡散障害といいます。拡散障害になる具体的な疾患としては、肺線維症、びまん性間質性肺炎、肺水腫などがあげられます。

拡散障害の画像

肺水腫による拡散障害

低酸素血症の原因まとめ

  • 低酸素血症の原因は、「喚起障害、喚起血流比の不均等、拡散障害」
  • 喚起障害は、ガスの交換量が少なくなること。
  • 喚起血流比の不均等は、換気量と血流量のバランスが悪くなること。これが極端な場合を、シャントや死腔という。
  • 拡散障害は、肺胞の膜が障害されて肺胞と肺毛細血管とのガス交換に障害ができた状態。

 

 

 

 

 


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