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ガス交換障害の原因
ガス交換障害の原因について、大別すると「喚起血流比の不均等、拡散障害」になります。
喚起血流比の不均等、拡散障害の復習と、それらを判断する指標について勉強します。
喚起血流比の不均等
喚起血流比っていうのは、換気量と血流量の比率のことです。

喚起血流比
単純に、「換気量÷血流量」 という式で求めます。
この比率が、0.8の時が最も効率的にガス交換ができている状態です。
関連記事:喚起血流比
しかし、どちらかが極端に少なかったり、多すぎたりすると効率よくガス交換ができなくなります。
喚起血流比が不均等になるのは、以下の2つのパターンがあります。V/Q比=0になる場合と、V/Q比=∞ になる場合があります。
肺胞の障害(シャント)
COPDや喘息などの気道が閉塞すると、シャントという状態になります。
肺血流が十分にあっても、肺胞が詰まっているとガス交換ができません。肺動脈がガス交換されないまま、肺静脈として流れてしまいます。

シャント
V/Q比=0 の状態になってしまいます。
肺血栓症(死腔)
肺胞が正常でも、そこに血液が流れてこないとガス交換ができません。このような肺胞は、V/Q比=∞ となります。
たとえば、V=5、Q=0.0001とすると
V/Q=5/0.0001=50000となります。

死腔
肺血栓症などで、肺動脈が詰まった状態などです。
拡散障害
拡散とは
拡散というのは、濃度差に従ってガスが移動することです。濃度が高いほうから、濃度の低いほうにガスが均等の濃度になるように移動します。
関連記事:肺胞の拡散

拡散
酸素は、肺胞から血液に移動します。二酸化炭素は、血液から肺胞に移動します。

このような仕組みを拡散といいます。
拡散が障害されるのは、有効膜面積の低下と肺胞膜の肥厚です。
具体的には、肺水腫などで肺胞に水がたまったり、肺線維症により肺の膜が分厚くなったりして拡散しにくくなる状態を言います。

肺水腫による拡散障害
ガス交換障害の指標
A-aDo2
肺の喚起血流比の不均等と拡散状態の程度は、A-aDo2という指標で表されます。この概念は非常に大切です。
A-aDo2の略語の意味について・・・
『A』は、肺胞(Alveolus)
『a』は、動脈(artery)
『D』は、差(Difference)
『O2』は、そのまんま酸素を表します。
ようは、肺胞気酸素分圧(PAO2)と動脈血酸素分圧(PaO2)の差のことです。
☆A-aDO2=PAo2 - Pao2

PAO2とPaO2
正常な肺では、スムーズにガスが移動するので、PAo2 とPao2は、ほぼ同じ値になるのでA-aDO2は0に近い値となります。
肺胞に障害がでたり、喚起血流比の不均等などがあると、PAO2は変化しませんがPaO2は低下するので、A-aDO2は増大します。
正常範囲は、吸入酸素濃度21%(室内気)に20以下です。
注意しなければならないのは、酸素吸入などにより高濃度酸素を投与するとA-aDO2は増大します。
A-aDO2=PAO2-PaO2
上の式をもう少し、詳しく書くと以下のようになります。

A-aDO2式
この式の、FIO2が酸素濃度となります。これが2倍になるとPAO2の値も、およそ2倍に増加します。そうなると、A-aDO2は劇的に上昇するのが分かります。
したがって、A-aDO2は室内気のみの基準として使います。酸素吸入中や、人工呼吸中の指標としては次に説明する酸素化指数を使います。
酸素化指数
A-aDO2は、室内気の場合の指標として使います。では、高濃度酸素を投与しているときの肺の状態はどのように評価するのでしょうか?
酸素化指数(PaO2/FIO2)
酸素化指数は、FIO2の影響が低い。
まとめ
- ガス交換障害の原因は、喚起血流比の不均等(シャント、死腔)と拡散障害
- ガス交換障害の指標は、「A-aDO2」と「酸素化指数」がある。
- A-aDO2の正常値は、室内気で20mmHg以下
- 酸素吸入下の指標は、酸素化指数を用いる。
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