低酸素血症の原因(疾患・高地・中毒など)

低酸素血症とは、SaO2(動脈血酸素飽和度)やPaO2(動脈血酸素分圧)が低下した状態をいいます。

今回は、どのようなときに低酸素血症になるのかについて紹介します。3学会合同呼吸療法認定士の試験でも低酸素血症になる状態について選択する問題が出題されるのでしっかり理解しましょう。

 

1.呼吸疾患

呼吸不全には、閉塞性喚起障害・拘束性喚起障害・混合性喚起障害がありますが、それらの全てが、低酸素血症の原因となりえます。それぞれについて簡単に説明します。

閉塞性喚起障害

閉塞性喚起障害とは、末梢の気道が閉塞することが原因とする呼吸不全です。喘息、COPD、慢性気管支炎、肺気腫、DPB(びまん性汎細気管支炎)などが代表疾患です。

拘束性喚起障害

拘束性喚起障害とは、肺胞が障害されることが原因とする呼吸不全です。
肺線維症、術後肺炎、間質性肺炎、呼吸筋力の低下などが代表疾患です。

混合性喚起障害

混合性喚起障害とは、閉塞性障害と拘束性障害の両方の症状がある疾患です。代表的なものに、結核などがあげられます。

 

2.神経疾患・麻酔

筋ジストロフィー

筋ジストロフィーは、遺伝性疾患であり筋繊維が徐々に壊されていくことにより、筋肉が萎縮して筋力が低下してしまう疾患です。呼吸筋の筋力が低下することにより、呼吸が弱くなり低酸素血症になります。

萎縮性筋硬化症(ALS)

身体の動作は、脳の命令を運動ニューロンがつたえることにより、身体が動きます。ALSでは、運動ニューロンが機能しなくなることにより、身体が思うよに動かせなくなります。それにより、呼吸筋の筋力も低下して低酸素血症になります。

全身麻酔

全身麻酔を行うと身体全体がマヒするので、呼吸筋を動かすことができなくなり、呼吸不全となります。したがって、全身麻酔じには、人工呼吸器が装着されます。

 

3.肺動静脈瘻

肺動静脈瘻とは、肺動脈と肺静脈に、異常な吻合があるために、肺胞をバイパスして血液がながれてしまう状態です。そのため、静脈血の酸素化が効率よく行えないため、低酸素血症に陥ってしまいます。

肺動静脈瘻の原因の50%は、先天性であり遺伝性出血性毛細血管拡張症により発症します。後天性で発症する原因としては、肝硬変や外傷などがあります。

 

4.高地

標高の高いところでは、空気が薄くなるとか言われたりします。実際には、大気圧が低くなります。

海面での大気圧は1気圧(760mmHg)です。そこから、標高が1000m上がると、およそ50~70mmHgずつ気圧が低下します。

大気圧が低くなると、肺胞に取り込むことができる、酸素の量が低下してしまいます。

肺胞内の酸素分圧の理論値は以下の式で求めることができます。

PAO2=(気圧-47)×酸素濃度-PaCO2/0.8

私たちが通常生活している場所で取り込める酸素の量について計算してみましょう。

・まず、私たちが生活する場所の気圧は1気圧(760mmHg)です。
・酸素の濃度は、大気の21%なので、式には0.21を代入します。
・PaCO2は、動脈血二酸化炭素分圧です。健常者は、40mmHgとなります。

これらを式に代入すると

PAO2=(760ー47)×0.21-40/0.8 となります。
これを計算すると・・・
PAO2は、『99.73mmHg』となります。

健常者のPaO2は、PAO2の-5mmHg程度なので、PaO2は、94.73mmHgくらいになるとおもわれます。

 

次は、標高がものすごい高い場所で、取り込める酸素の量について計算してます。富士山の標高は約4000mです。標高4000mで取り込める酸素の量について計算しましょう。

さっきと同様に、下の式に数値を代入すると求めることができます。

PAO2=(気圧-47)×酸素濃度-PaCO2/0.8

・標高4000mでの気圧は、520mmHgとなります。
・酸素濃度は、地球上では大気の21%なので0.21を代入します。
・PaCO2は、健常者では40mmHgとなります。

これらを式に代入すると

PAO2=(520-47)×0.21-40/0.8 となります。
これを計算すると・・・
PAO2は、『49.33mmHg』となります。

このように、高い場所に行くと空気の密度が薄くなるため、肺内に取り込める酸素の量が低下します。PAO2(肺胞気酸素分圧)が低下すると、PaO2もおのずと低下します。

5.中毒

シアン中毒

シアン中毒とは、シアン(青酸)化合物が体内に入ることにより、発症する中毒です。シアンは、細胞の呼吸を助けるチトクローム酸化酵素と結合して酵素の働きを阻害します。

チトクローム酸化酵素は、細胞が呼吸をするのを助ける働きがあります。酵素が働かなくなると、細胞の呼吸ができなくなります。

一酸化炭素中毒

火災での死亡の原因の1番が一酸化炭素中毒と言われています。一酸化炭素はヘモグロビンへの結合力が、酸素の250倍あるといわれています。一酸化炭素を吸引した場合、ヘモグロビンに一酸化炭素が吸着されて、ヘモグロビンに酸素が結合することができなくなってしまいます。これにより、低酸素血症となります。

 

6.心不全

心不全とは、心臓の拍出が弱くなり血液を送り出す量が低下してしまう病態です。心不全では、肺胞に流れる血液が少なくなるり、静脈血の酸素化が悪化します。また、全身に動脈血を送る効率も低下するため、生体全体での酸素状態も悪化します。

 

まとめ

3学会呼吸療法認定士の試験では、低酸素血症になる項目を選択する問題が出題されます。今回紹介した、疾患名をしっかり覚えておけば回答することは可能です。