死腔と喚起効率

肺胞のガス交換に影響を与える因子としては、「PAO2、拡散、喚起血流比、シャント、死腔」があります。

今回は、「死腔」について紹介します。それでは、始めましょう!

死腔とは?

死腔とは、気道の中でガス交換に直接関与しない空間のことです。

例えば、成人の1回換気量は、約500ml程度です。この1回換気量の500ml全てがガス交換に使われるわけではありません。

なぜなら、ガス交換に関与する部分は肺胞のみだからです。この肺胞が現れるのは、気管が約17分岐くらいした後に現れる呼吸細気管支から末端のみです。

喉頭~終末細気管支までの空間に入ったガスは、喚起に関与しません。このような、ガス交換に関与しない空間のことを解剖学的死腔といいます。

死腔の説明画像

ちなみに、成人の解剖学的死腔の量は、約150mlほどです。したがって、一回の呼吸で500mlの空気を吸い込んだ場合、実際にガス交換に使われる空気の量は

500-150=350ml

となり、350mlだけがが肺胞でガス交換に使われるということです。

死腔の種類

解剖学的死腔

気道内で、ガス交換に関与しない部位の容量を解剖学的死腔といいます。

死腔の説明画像

機械的死腔

機械的死腔は、気管挿管して人工呼吸器を使用する場合に発生する死腔です。

人工呼吸器に接続されるチューブは、換気量に含まれますがこの部位は、患者の肺胞に届かないので呼吸には使えません。

気管チューブ、人工鼻、呼吸回路との接続チューブなどが機械的死腔となります。

機械的死腔の画像

肺胞死腔

肺胞死腔というのは、肺血流が極端に少ない部位の肺胞などです。

肺胞死腔の画像

肺胞が膨らんでいても、十分な血流がないとガス交換ができません。このような、V/ Q比=∞(無限大) となるような肺胞を肺胞死腔といいます。

例えば、V(換気量)=5、Q(血流)=0.001 とした場合には、V/Q比は

V/Q比=5/0.001=5000

というように、非常に大きくなります。このように喚起はあるけど、血流が少なすぎる肺胞(V/Q比=∞ の肺胞)を肺胞死腔といいます。

生理学的死腔

解剖学的死腔と肺胞死腔を合わせたものを、生理学的死腔といいます。

人体での、死腔量の合計のことです。

死腔と喚起効率

死腔の意味を理解しておくことは、臨床上でも非常に重要です。なぜなら、人工呼吸器の設定では死腔の影響をできるだけ受けないように考慮する必要があるからです。

例えば、人工呼吸器で次の2パターンの呼吸設定について考えてみましょう。

1つ目は、一回換気量500ml、分時喚起回数10回とします。

2つ目は、一回換気量250ml、分時喚起回数20回とします。

どちらも、分時換気量(一回換気量 × 喚起回数)は、同じ5000mlです。ただし、このような設定では実際に患者さんに投与することのできるガスの量が大きく違ってきます。

そうです!人体には、死腔という空間が存在するからです。

1つ目の、喚起設定の場合に、実際に患者さんのガス交換に関与しているガスの量を計算してみましょう。

実際に、喚起に使うことができるガスの量は、
(1回換気量)-(死腔量)
となります。

したがって、一つ目の設定での実際に患者さんに投与できるガスの量は

(500-150)×10=3500となります。

二つ目の呼吸設定についても、同様に計算すると・・・

(250-150)×20=2000となります。

人工呼吸器で、同じ分時換気量に設定しても、喚起回数や、1回換気量の値により実際にガス交換に関与できるガスの量が大きく違ってきます。

喚起回数を無駄に多くしたり、1 回換気量の量を少なくしすぎると喚起効率が低下してしまうので注意が必要です。

また、人工呼吸以外の場面でも、呼吸苦がある患者さんにはゆっくり深く呼吸するように指導しますよね。これは、一回換気量を多くして死腔量の影響をできるだけ少なくする為に指導しているのです。

死腔率とは

呼吸検査の項目で、死腔率というものがあります。それについても簡単に説明しておきましょう。

死腔率というのは、全肺胞の中で、肺胞死腔の割合を表した値です。

死腔率=肺胞死腔÷全肺胞

死腔率の説明画像

上の画像のような場合では、肺胞が5つありその中で1つの肺胞は血流が途絶えて死腔となっています。

式に当てはめると死腔率は

1÷5=0.2 となります。

 

ただし臨床の場では、肺胞の容量などは、直接測定することが難しいので血液ガスの値により計算します。

死腔率の計算は、以下になります。丸覚えでもいいです。

☆VD/VT=(PaCO2-PECO2)/PaCO2

  • Dは、dead(死)肺胞死腔量を表します。
  • Tは、tidal(波)呼吸は、波のように繰り返すのでこの頭文字をとったのでしょう。VTは、1回の呼吸量を表します。
  • Eは、exhalation(呼気)PECO2は、呼気中のCO2分圧の平均値を表します。

VD/VT(死腔率)の正常値は、0.2~0.3です。

なぜ、このような計算になるのかというと・・・

生理的条件では、PACO2=40mmH、PECO2=36~38mmHg程度です。

PAO2とPECO2が同じにならないかわかるでしょうか?

ちょっと考えてから読み進めてください。

PECO2が下がる原因は、今回学んだ肺胞死腔が原因です。

死腔率の説明画像2

上のイラストを見ればわかると思います。

正常な肺胞ではPaCO2とPACO2の値は同じ値になります。二酸化炭素は、拡散能力が高い為です。

しかし、肺胞死腔では血流が途絶えているのでPACO2はほぼ0mmHg(吸ったガスと同じ濃度)となります。このように、呼気ガスには、肺胞死腔からのガスも含まれるのでPECO2は、PACO2(PaCO2)より低くなるのです。

計算式では、PECO2が下がるほど死腔率(VD/VT)が上がるような計算式になっています。肺胞死腔が増えるほど、PECO2の値が下がるからです。

☆VD/VT=(PaCO2-PECO2)/PaCO2

(ちなみに、計算式ではPACO2でなくて、PaCO2が使われています。どちらで計算しても結果は同じですが、PACO2は血液ガス分析などで直接測定できないのでPaCO2が式に使われています。)

なんとなく式の意味が理解できたでしょうか?

死腔のまとめ

  • 死腔とは、ガス交換に関与しない空間のこと
  • 解剖学的死腔と肺胞死腔を合わせて生理学的死腔という。
  • 機械的死腔は、人工呼吸器と患者の接続チューブの容量のこと
  • 解剖学的死腔の容量は、成人で150ml程
  • 実際に喚起につかわれるガスは、一回換気量から生理学的死腔を引いた値
  • 死腔率は、肺胞死腔の割合を表す。正常値は、0.2~0.3

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