COPDの呼吸管理

COPDの病型

COPDは、気腫型と非気腫型に分類されます。

気腫型は、喫煙が原因となるもの。肺胞の弾性収縮力が失われて肺胞が破壊される状態となる。(肺気腫)

非気腫型は、慢性の気管支の炎症により非可逆的な気道閉塞を起こす状態のこと。(慢性気管支炎)

肺気腫や慢性気管支炎などの不可逆的な閉塞性肺疾患をまとめてCOPDと呼びます。

COPDの病期分類

COPDの重症度は、FEV₁/FVC(1秒率)と%FEV₁(%1秒量)により分類します。

復習

・FEV₁(1秒量)
深く息を吸って、おもいきり息を吐き出したときの最初の1秒間に吐き出した空気の量

・FVC(肺活量)
深く息を吸って、吐き出せるだけ息を吐き出した空気の量

・FEV1/FVC
1秒率のこと。FEV₁%と表されることもある。

求め方は
FEV₁%=FEV₁/FVC)×100〔%〕

・%FEV₁
%1秒量のこと。
年齢や身長により求めた予測FEV₁に対して、測定したFEV₁が何%あるかというもの。

求め方は
(実測FEV₁/予測FEV₁)×100〔%〕

※図を作る

【COPDの病期分類】

  • Ⅰ期(軽度)
    FEV₁/FVC<70%、%FEV₁≧80%
  • Ⅱ期(中等度)
    FEV₁/FVC<70%、50%≦%FEV₁<80%
  • Ⅲ期(高度)
    FEV₁/FVC<70%、30%≦%FEV₁<50%
  • Ⅳ期(極めて高度)
    FEV₁/FVC<70%、%FEV₁<30%あるいは%FEV₁<50%かつ慢性呼吸不全合併

安定期の管理

薬物療法

コリン薬

COPD治療の第一選択は、長時間作用型の抗コリン薬(LAMA)の吸入です。抗コリン薬は、気管支を収縮させるアセチルコリンの作用を阻害する働きがあります。

参照:抗コリン剤とは

β2刺激薬

β2刺激薬は、気管支平滑筋を弛緩させて気管支を広げる作用があります。作用時間により短時間作用型と長時間作用型に分類されます。

  • 短時間作用型
    一次的な息切れや、運動時の呼吸困難の予防に有効
  • 長時間作用型
    抗コリン薬と併用すると相乗効果。抗コリン薬が使用できない場合は第一選択となる。

参照:β2刺激薬について

徐放性テオフィリン

経口摂取のメリットがあるが、他の薬剤と比べて効果が劣ります。

吸入ステロイド

重症患者の増悪を減らす効果が報告されています。さらに副腎皮質ステロイドと長時間作用型β2刺激薬を併用すると抗コリン薬に匹敵する効果があります。

ワクチン接種

COPD患者は、感染症が重症化しやすいので、ワクチンを接種が推奨されています。効果があるのは、以下の2つのワクチンです。

  • インフルエンザワクチン
    死亡率が50%低下
  • 肺炎球菌ワクチン
    肺炎発症率が有意に低下

呼吸リハビリテーション

COPDに対するリハビリテーションは、息切れの軽減やQOLの向上に効果があります。ただし、生命予後改善のエビデンスはありません。

酸素療法

長期酸素療法(LOT)は、重症COPD患者の生命予後改善効果が証明されています。

酸素療法について詳しくは、8章で学習します。

急性増悪の管理

急性増悪とは、○○です。COPD患者は、しばしば増悪を引き起こすことがあります。

原因は、ウイルスや細菌による感染症などがあります。このような急性増悪を早急に診断して治療することが重要です。

重症度を示す病例・兆候

重症度を示す病歴

  • 安定期に比べて悪化した症状の強さやその期間
  • 安定期の気流閉塞の程度
  • 年間の増悪回数の既往歴
  • 肺合併症や全身依存症
  • 現在の治療内容
  • 人工呼吸器の使用歴

重症度を示す兆候・身体所見

  • チアノーゼ
  • 呼吸補助筋の使用や奇異性呼吸
  • 右心不全の兆候や血行動態の不安定などの心不全兆候
  • 意識レベル低下などの精神状態の兆候

COPD急性増悪時の検査

全ての患者

  • パルスオキシメトリ
  • 動脈血ガス分析
  • 胸部エックス線写真
  • 心電図
  • 血液検査
    (血算、CRP、電解質、肝・腎機能など)

必要に応じて行う

  • 胸部CT
  • 感染症学的検査
    (血液培養、喀痰グラム染色と培養、肺炎球菌尿中抗原など)

入院とICU入室の基準

入院の適応

  • 低酸素血症の悪化
  • 急性の呼吸性アシドーシス
  • 呼吸困難の増加
  • 膿性痰、痰量の増加
  • 安定期の気流閉塞の重症度
  • 初期治療に反応しない場合
  • 重篤な併依存症(心不全、肺塞栓、肺炎、気胸、胸水、治療を要する不整脈などの)の存在

ICU入室の適応

  • 初期治療に反応しない重症の呼吸困難
  • 不安定な精神状態
  • 生命が危険な重症例
  • 酸素投与やNPPVで低酸素血症が改善しない場合
    (PaO₂<40)
  • 呼吸性アシドーシス(ph<7.25)
  • 侵襲的陽圧喚起が必要な場合
  • 血管収縮薬が必要な血行動態

急性増悪時の治療

薬物療法

薬物療法では、「抗菌薬、気管支拡張薬、副腎皮質ステロイド」を考慮します。

  • 抗菌薬
    膿性痰、白血球・CRP増加が認められるときは、抗菌薬を点滴投与します。
  • 気管支拡張薬
    増悪時の第一選択として、短時間作用型のβ2刺激薬の吸入を行います。効果が不十分な場合は、30~60分毎に繰り返します。ただし、循環器系の影響に注意します。
  • 副腎皮質ステロイド
    増悪時の気道閉塞改善、症状改善効果が認められる。早期に経口または点滴で投与する。
    プレドニン換算で30~40mmHg/日を7~10日投与する。

酸素療法

吸入酸素濃度を一定に保つために、ベンチュリ―マスクなどのハイフローシステムを使う。FIO₂を24~28%から開始して、SpO₂>90%(できれば94~95%)になるようにFIO₂を調整する。

いきなりの高濃度酸素投与は、CO₂ナルコーシスの危険がある為、低濃度酸素から開始して、徐々に酸素濃度を上げていくことが重要。ちなみにこのような方法をCOT(controlled oxygen therapy)と呼ぶ。

CO₂ナルコーシスとは

呼吸中枢では、PO2の低下、PCO2の上昇、pHの低下の刺激により換気量を増加させるように働く。それを、いきなり高濃度酸素を投与すると呼吸中枢の刺激が止まり呼吸が止まる恐れがある。特に、COPDなどの慢性的なⅡ型呼吸不全は、注意が必要。

酸素慮法で、SpO₂が改善しない場合は、NPPVまたは、挿管による人工呼吸を考慮する。

NPPV

NPPV(non invasive positive pressure ventilation)は、日本語で非侵襲的陽圧喚起療法です。挿管を行わないマスクを装着により、陽圧をかけた喚起補助ができます。

COPD増悪時のエビデンスレベルAとなっており、挿管による人工呼吸器の前のオプションとして有効です。

(NPPVについて詳しくは、12章で学習します。)

まとめ

COPDは、呼吸疾患の中でも非常に患者数が多くますます増加しています。重要な呼吸器疾患なので試験にもよく出題されます。しっかりと覚えていきましょう。

以下の内容を自分の言葉で説明できるようになりましょう。

<確認テスト>

  • COPDの病期分類は?
  • 安定期の管理方法は?
  • 急性増悪の兆候は?
  • 急性期の治療方法は?

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