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はじめに
今回は、肺の検査の中でも少しわかりにくい、クロージングボリューム(CV)について紹介します。できるだけ分かりやすいように、図とグラフを多めに使って解説しました。
クロージングボリュームの測定法
クロージングボリュームは、1回呼吸法により求めた、窒素洗い出し曲線より求めます。検査方法は、最大呼気位まで呼出したの後、純酸素を精一杯吸い込み、ゆっくり息を吐き出した時の、窒素の濃度を測定します。
クロージングボリュームから、末梢気道閉塞の程度を調べることができます。
窒素洗い出し法では、以下のような波形が記録されます。

グラフの意味と見方と意味については、後でに詳しく説明します。
ちなみに上の図に略語がたくさん出てきましたが、これらは面倒でも覚えないとしょうがないので説明します。
クロージングボリュームの詳細説明
まず、窒素洗い出し法では、肺胞内に酸素で満たすために、一度、肺内の空気を精一杯吐き出します。これ以上吐き出せないところまで息を吐き出した状態を、最大呼気位といいます。
(ちなみに空気中の78%は窒素なので、図の青色で塗りつぶした部分は、窒素だと考えてください。)

ただ最大呼気位まで息を吐いても、肺胞はペッチャンコにつぶれません。頑張って息を吐き出しても、少量の空気が肺胞内には残ります。
この量を残気量といいます。残気量は、肺尖部(肺の一番上)の方が肺底部より多くなります。これは、気圧による影響の為です。山の頂上に行けば気圧が低くなり、平地では気圧が高くなりますが、肺でも同じです。


肺尖部と肺底部では、30センチほどの高低差があり、肺尖部は、肺底部より7.5cmH2O胸腔内の圧力が低くなります。胸腔内の圧力が低いほど肺胞は大きく膨らみます。

そして、最大呼気位から、純酸素を精一杯(最大吸気位)まで吸い込みます。
すると、肺胞内には以下のように酸素が含まれます。肺尖部では、肺胞が最大呼気位において、も空気が多く残っているので、それほど酸素をため込むことができません。それに対して、肺底部は、肺胞が縮んで空になっていたため、たくさんの酸素をため込むことができます。
純酸素を吸い込んで、吐き出し始めから、クロージングボリューム曲線の測定が開始されます。はじめは、N2濃度は、0です。これは、呼気のはじめは気道内に貯まっていた純酸素が吐き出されるためです。


そして、気道内の純酸素の呼出が終わると、じわじわとN2濃度が上昇します。気道内の酸素が呼出された後は、肺底部の肺胞から窒素も排出されてくるためです。

肺底部の呼出が終わると、徐々に肺の中心部の比較的N2濃度の高い空気が呼出されます。この時は、N2濃度の上昇が鈍くなります。
さらに、呼出を続けていくと、最終的には、肺尖部からのガスが排出されます。肺尖部の肺胞は、酸素があまりため込まれていなかったため、かなり高いN2濃度の呼気が呼出されます。そのため、N2濃度はさらに急上昇します。


この、N2が再上昇する時点は、肺底部の空気を吐き切って、肺底部の気道が閉塞し始めるタイミングとされています。そして、肺底部が閉塞したのちに吐き出される空気の量であるⅣの範囲をクロージングボリュームといいます。
したがって、クロージングボリュームは、肺底部の気道が閉塞したあと、肺尖部の肺胞から吐き出される呼気の量といえます。クロージングボリュームからは、末梢気道の閉塞度が評価できます。
健康な若者では、CVは、肺活量の10%程度になりますが、喫煙者などの末梢気道に閉塞がある患者では、クロージングボリュームが増加し、第Ⅳ相が現れるのが早くなります。
例えば、長期間タバコを吸ってCOPD(肺気腫)を患っている患者では、以下のようにCVが増加する波形が見られます。

ちなみに、CVとRV(残気量)を足した量をCC(クロージングキャパシティ)といいます。
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