酸素運搬の因子

呼吸の目的は、酸素を体の抹消まで運搬することです。体でエネルギーを作り出すには、酸素を必要とするからです。

どのようにエネルギーを作るのかは、試験の範囲外ですが詳しく知りたい方は、「啓林館」のサイトにわかりやすくまとめられています。(高校の生物で習いますね・・)

今回は、酸素を抹消まで運搬するのに影響する因子を紹介します。試験にも頻出なのでしっかり学んでいきましょう!

酸素運搬の因子

抹消に酸素を十分に送るには、肺胞でのガス交換が十分に行われて酸素を血液中に取り込み十分なPaO2を確保することが必要です。ただ、酸素を運搬するには喚起以外にも重要な因子があります。

それが、ヘモグロビン濃度と心拍出量です。血液中の酸素は、ほぼヘモグロビンと結合した状態で存在します。その為、ヘモグロビンにどの程度酸素が結合しているか?そして、血液中のヘモグロビン濃度などが重要です。

呼吸による酸素供給の流れ

ヘモグロビンとは

ヘモグロビンについて簡単に説明します。

ヘモグロビンとは

ヘモグロビンの基本的な構造について説明します。

ヘモグロビンは、分子量64500のたんぱく質です。たんぱく質に、4つのヘムが結合しています。

それぞれのヘムは、1つの酸素分子を運ぶことができます。

ヘモグロビンのイメージ図

ヘモグロビンのイメージ

ヘモグロビンの種類

上で説明したヘモグロビンの他に、メトヘモグロビン、一酸化ヘモグロビンなどの酸素と結合できないヘモグロビンもあります。

※図3 表 ヘモグロビンの種類

それらを含めて、ヘモグロビン1gに結合できる平均的な酸素の量は1.34gです。

CaO2について

CaO2とは

血液中にどの程度、酸素が含まれているのかというのは、CaO2という値で表します。

C:content (中身、内容物)
a: arterial(動脈)
O2:oxygen(酸素)

CaO2は、「動脈血酸素含有量」の略称です。

動脈血中に酸素が、どのくらい含まれているのか?ということを表します。具体的には、動脈血100ml(1dL)に何mlの酸素が含まれているのかという値です。

CaO2の求め方

CaO2は、「Hb、SaO2、PaO2」が分かれば求めることができます。

☆ Cao2=1.34×Hb×Sao2/100+0.003×Pao2

式の前半部分(1.34×Hb×Sao2/100)はヘモグロビンと結合した酸素の量。式の後半部分(0.003×Pao2)は、血液中に溶解された酸素の量を表しています。

この計算式を使って、Cao2を求める問題は試験によく出題されます。

式の説明

式の意味を理解するには、実際に問題を解いてみるとよいでしょう。次の問題を解きながら、式の意味を理解していきましょう。

<問題>

Hb=15g/dL、Sao2=98%、Pao2=100mmHgのときのCao2を求めよ。

<回答>

式に直接値を代入すると求めることができます。

Cao2=1.34×Hb×Sao2/100+0.003×Pao2

上記の式に、「Hb=15g/dL、Sao2=98%、Pao2=100mmHg」を代入すると

Cao2=1.34×15×98/100+0.003×98=○○ となります。

<式の説明>

計算式の丸覚えで解けますが、なぜこんな式になるの?意味が分からないと気持ちが悪い・・・という人が大半だと思います。

そこで、式の意味を説明します。ここからの説明は、私の自己満足なので時間がない人は読まなくて大丈夫です。ただ、意味を理解しておけば式を忘れてもCaO2を計算できます。それでは、やっていきましょう!

まず、CaO2っていうのは「100ml中の動脈血に含まれる酸素の量」のことです。この量を、考えていきましょう。

血液中の酸素は「ヘモグロビンに結合している酸素」「血液中に溶けている酸素」の2つに分類されます。この2つがわかれば、CaO2を求めることができます。

酸素含有量のイメージ図

酸素含有量のイメージ図

①ヘモグロビンに結合している酸素

ヘモグロビンに結合している酸素が何gあるかを求めてきます。ちなみに、CaO2は100ml中の血液に含まれる酸素の量なので、100ml中の血液で、ヘモグロビンと結合している酸素の量を求めます。

※図5

ヘモグロビンに結合している酸素の量を求めるのは、簡単です。問題文にヘモグロビン濃度(Hb=15g/dL)が記されています。

ヘモグロビン濃度は、100mlの血液中に何gのヘモグロビンが含まれるのかを表します。よって、

Hb=15g/dL というのは、100ml(1dL)の血液にヘモグロビンが15g含まれている

ということを表します。

cao2の説明

15gのヘモグロビンには酸素が何グラム結合できるかを考えればよいでしょう。

ちなみに、1gのヘモグロビンは1.34gの酸素と結合できます。

したがって、15gのヘモグロビンでは、

15×1.34=○○となります。15gのヘモグロビンは、に酸素が全て結合している場合(SaO2=100%のとき)は○○の酸素が結合できます。

ただし、全てのヘモグロビンに酸素が結合しているとは限りません。酸素が結合していないヘモグロビンもあるかもしれません。

今回の問題文には、SaO2=98%という条件が記されています。SaO2というのは、酸素飽和度という略語です。酸素と結合しているモグロビンの割合を表します。

したがって今回は、98%ヘモグロビンに酸素が結合しているという意味です。

最大結合量に、98/100をかけます。

15×1.34×98/100=

これが結合酸素の量です。

次は、溶存酸素を求めます。

②溶存酸素

溶存酸素は、結合酸素と比較すると非常に少ないです。100mlの動脈血中に含むことができる酸素の量は、酸素分圧に影響します。

溶存酸素=0.003×PaO2

溶存酸素のイラスト

溶存酸素の計算

0.003×98=

③CaO2を求める

○○と○○が求められましたね。これらを合わせた量がCaO2となります。このように計算してみると、溶存酸素はごくわずか。溶存酸素は、HbやSaO2の影響が強いということがわかります。

 

・ヘモグロビン1gに結合できる酸素は1.34g

・溶存酸素は、PaO2×0.003

これだけを覚えておけば、CaO2を求めることができます。

 

長々と説明しましたが、なんとなくわかったでしょうか?呼吸の学習では、イメージすることが大切です。理解しておけば応用力が付きます。丸暗記することが減る。知識がつながる。初めて見る問題でも、考えて解ける。初めからすべて理解するのは難しいかもしれませんが、繰り返し学習するうちに理解が深まります。

まとめ

  • 抹消への酸素運搬の重要因子は「ヘモグロビン濃度と心拍出量」
  • 動脈中に含まれる酸素の量は、CaO2(動脈血酸素含有量)と表す。
  • CaO2は100mlの動脈血に含まれる酸素の量
  • CaO2の値は、結合酸素と溶存酸素を合わせたもの
  • 1gのHbに結合できる酸素の量は「1.34g」
  • 100ml中の動脈血の溶存酸素は、PaO2×0.003

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