出生時に、呼吸循環動態の移行がスムーズに行われない事例は、全出産の10%に見られます。
さらに1%は救命の為の蘇生手段が必要とされています。今回は、蘇生の手順を詳しく見ていきましょう。まずは、図の流れに目を通してください。
目次(クリックすると移動します)
出生時の評価
出生直後に蘇生処置が必要かを判定します。
- 成熟児か?
- 呼吸・揥泣は良好か?
- 筋緊張は良好か?
問題なければ、ルーチンケアをします。問題があった場合は、「蘇生の初期処置」を行います。
蘇生の初期処置
蘇生の初期処置
蘇生の初期措置は、「保温、気道確保、皮膚刺激」です。
- 保温
新生児は体温低下しやすいので、乾いたタオルで拭いて、ラディアントウォーマ(加温装置)を使います。
在胎28週未満で修正した場合は、出生直後にプラスチックのラップで首から下を包みます。また、分娩室の温度を26度以上にします。 - 気道確保
仮死の兆候があれば仰臥位でsniffing position(気管挿管の体位)をとらせます。後頭部の大きい新生児は、肩枕を入れると気道確保しやすい。
この体位で、呼吸が弱い場合は、気道の閉塞が考えられるので、吸引を行います。口腔、鼻腔の順に吸引します。 - 皮膚刺激
乾いたタオルで拭くことは、保温と皮膚刺激の効果があります。これでも自発呼吸がない場合は、児の足底を平手で2,3回叩いて指先で弾いたりします。
蘇生の初期処置後の確認
「初期措置後」に、自発呼吸と心拍の確認をします。
- 自発呼吸なし又は、心拍100/分未満は「人工呼吸」
- 自発呼吸ありかつ、心拍100/分以上
努力呼吸とチアノーゼがあればSpO2モニタして酸素投与検討
努力呼吸とチアノーゼなければ「蘇生後のケア」
蘇生の初期処置の効果の評価と次の処置
蘇生の初期措置の効果の評価
- 心拍数の評価
10秒間の回数を数えて10倍する。
臍帯拍動触知では過小評価の可能性があるので、胸部聴診又はパルスオキシメーターでの心拍測定を行います。 - 酸素化の評価
肉眼では、正確性が低いのでパルスオキシメータ―の使用が推奨されます。また、蘇生が必要な児には右手に装着することが必要です。
(出生時は動脈管〔Botallo〕が開存している為、動脈管→肺動脈→下大動脈→右左短絡が生じやすい。左半身は酸素化されやすい。脳循環を確実に確認するには右手を調べます。)
空気を用いたCPAPまたは酸素投与
出生後10分以内は、正常新生児でも動脈管前SpO2はばらつきが多い。
また、蘇生時に100%酸素を用いると有害な影響(第一啼泣までの時間の延長、死亡率の増加、細胞レベルの害)を与えます。したがって、できるだけ100%酸素の使用を避けることが推奨されます。
仮死児の蘇生時には、パルスオキシメーターを使用することが推奨。パルスオキシメータ―、酸素ブレンダを常備し、SpO2をモニタしながら必要最小限の酸素を投与する。
CPAP(持続的気道陽圧)を使う場合は、まずは空気でのCPAPから開始します。新生児のCPAPは、流量膨張式バッグとマスクを用いたMask CPAPと特殊な鼻かニューレを用いたNasal CPAPがあります。
気胸を予防するために気道内圧をモニタして5~6㎝H2OのCPAPを行います。空気で開始して、効果が不十分であれば吹き流しの酸素を用いてフリーフロー酸素の投与を行います。
人工呼吸(非挿管)
蘇生の初期処置にて、無呼吸(もしくは喘ぎ呼吸)か心拍<100/分未満の場合は、直ちにバックマスクで人工呼吸を実施します。
<新生児蘇生時の人工呼吸のポイント>
- 過剰酸素の投与を避ける
正期産児や正期産児に近い児での人工呼吸には空気を使用する。 - 各種バックの特徴
バックは自己膨張式と流量膨張式があり、熟練者でない場合は自己膨張式が使いやすい。①自己膨張式バック
過剰加圧防止弁がついていて一定の圧力以上かからないようになっている。閉鎖式のリザーバを付けないと90~100%の高濃度酸素を供給できない。②流量膨張式バック
フリーフロー酸素投与や吸入酸素濃度の調整が容易。児の肺の方さや気道抵抗をバックを圧迫するときに感じやすい。ただし、過剰加圧防止弁が付いていないので、圧力計を接続して、モニターを見ながら加圧する。 - T-piece蘇生装置
人工呼吸の装置は、流量膨張式バック・自己膨張式バック・T-piece蘇生装置が販売される。マスクを顔面に密着させてCPAPをかけることができる。 - マスク
マスクは児の鼻と口を覆うが目にかからないサイズを選択する。眼球を圧迫すると迷走神経反射で徐脈をきたしたり、緩急損傷の危険性がある。
NCPRGL2010では、ラリンジアルマスクエアウエイ(LMA)が出生時体重2000g以上、在胎34週以上の新生児の蘇生において、第二のエアウエイとして気管挿管の代替手段となった。 - 気管挿管
以下の場合気管挿管を検討します。
気管チューブのサイズは、予測体重に合わせて内径2.0~3.5㎜のものを準備する。先端まで同径でCole型は使用しない。
経口挿管時の口唇からの標準的な挿入長は、体重(㎏)+6㎝が指標となる。
胸骨圧迫
胸骨圧迫は、胸骨上で両側乳頭を結ぶ線のすぐ下方を圧迫します。
- 胸郭包み込み両母指圧迫法(親指法)・・通常推奨される方法。効果的で疲労が少ない。
2本指法・・術者の手が小さかったり、蘇生施行者が一人で人工呼吸と胸骨圧迫を行わなければならない場合は、2本指圧迫法が進められる。片手でできるメリットがある。
薬剤投与
出生直後の薬剤投与ルートは、臍帯静脈と気管内投与があります。
<臍帯静脈>
第一選択薬剤は、アドレナリンで「100%酸素投与人工呼吸、胸骨圧迫30秒以上続けても徐脈が改善しない場合」に投与します。
10000倍希釈アドレナリン(ボスミンを10倍に希釈)を0.1~0.3ml/kg(0.01~0.03mg/kg)の1回量で静注します。必要に応じて、3~5分ごとに再投与します。
<気管内投与>
気管内投与は、吸収が不十分なので静脈路確保に時間がかかるときのみに実施します。10000倍希釈アドレナリン(ボスミンを10倍に希釈)を0.5~1.0ml/kg(0.05~0.1mg/kg)を気管内投与します。
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