人工呼吸器の適応基準(急性呼吸不全,慢性呼吸不全)

人工呼吸器

人工呼吸器の適応

人工呼吸器は、全身麻酔下など呼吸抑制時や、酸素吸入だけでは酸素可が困難な場合などに使用されます。

人工呼吸器の導入基準については、急性呼吸不全と慢性呼吸不全とで異なります。それぞれの基準について、基準が設けられているのでそれぞれについて紹介します。

 

呼吸不全とは

呼吸不全とは、PaO2が60mmHg以下に低下した状態であると定義されています。PaO2の低下だけで、PaCO2が上昇しないものを、Ⅰ型呼吸不全,PaCO2の上昇も伴うものをⅡ型呼吸不全といいます。

そして、PaO2が60mmHg以下の状態が1ヶ月以上継続している状態を慢性呼吸不全といいます。

以下に急性呼吸不全と慢性呼吸不全の導入基準を紹介します。

 

急性呼吸不全の人工呼吸器適応基準

呼吸器の状態は『換気力、酸素化能、換気効率』の3項目で評価します。

パラメータ 適応 正常範囲
喚起力
呼吸数(回/分) <5または>35 10~20
1回換気量(mL/kg) <3 8~12
肺活量(mL/kg) <10 65~75
最大吸気圧(cmH2O) <20 75~100
酸素化能
PaO2(mmHg) <60(FIO2=0.6) 75~100(FIO2=0.21)
A-aDO2(mmHg) >350(FIO2=1.0) 25~65(FIO2=1.0)
喚起効率
PaCO2(mmHg) >60 35~45
VD/VT >0.6 0.3

(第20回呼吸療法認定士 認定講習会テキストより引用)

急性呼吸不全の導入基準については、酸素吸入をしてもPaO2が上昇しない場合または、PaCO2が60mmHgを超える場合についてです。詳細は、上記のとおりです。

 

慢性呼吸不全の人工呼吸器適応基準

慢性呼吸不全患者の場合は、急性呼吸不全より適応のレベルが少し厳しくなっています。理由としては、長期間呼吸不全の状態が続くと、患者自身が、低酸素や、高二酸化炭素血症の症状に慣れます。

また、PaCO2が上昇すると、呼吸性アシドーシスとなりpHが低下します。しかし、慢性呼吸不全の場合は、腎臓が代替機能を行ないます。呼吸が少なくなって、二酸化炭素が上昇して、pHが低下する場合、腎臓より水素イオンを排出して、pHが正常範囲に補正されます。

このような理由により、慢性呼吸不全の場合は、急性呼吸不全よりは、人工呼吸器の導入基準が少し厳しくなります。ただ、PaCO2が高いだけでは人工呼吸を導入しないのです。PaCO2上昇に加えて、各種の症状が発生した場合に人工呼吸器を装着します。

急性呼吸不全での人工呼吸器適応

高二酸化炭素血症に加えて以下の症状があった場合

  • 意識障害
  • 呼吸数の異常(RR>40またはRR<6)
  • pH≦7.2
  • 強い低酸素血症(PaO2≦45mmHg
  • シーソー様呼吸の存在
  • 去痰不能

 

慢性呼吸不全では、少々PaCO2が上昇してもそれほど気にしません。腎臓が代償して、PHを調整してくれるからです。

したがって、慢性呼吸不全の場合はpHに注目します。慢性呼吸不全で、pHが低下してきたら、腎臓でも代償できないくらい呼吸状態が悪化したということになります。そういった場合に、人工呼吸器を導入するわけです。