人工鼻とは?(人工呼吸回路の加温加湿)

人工鼻とは

人工鼻は、人工呼吸器使用中に吸気ガスを加湿するための器具であり、Yピースと気管チューブの間に装着されます。人工鼻の内部は繊維紙やスポンジなどでできており、患者の呼気中の水分を吸収して、吸気時にその水分を再び患者に吸わせることにより、人間の鼻と同様の加湿効果を得ることができます。

人工鼻(COVIDIENのHPより引用)

人工鼻の長所

人工呼吸器回路の簡略化

人工呼吸器の加温加湿に一般的に使われる能動的加温加湿器(HH)と比較すると、回路が簡略化されるので人工呼吸回路の組み立てが簡便になります。また、人工鼻使用時は、回路内に結露ができないので、ウォータートラップが必要なく、ウォータートラップからのエアー漏れのトラブルや、定期的にウォータートラップに溜まった水を廃棄する手間もいりません。

HHでは、電源の入れ忘れや、加湿チャンバの空焚きなどのヒューマンエラーなど経験したことがある方が多くいると思いますが、そうした心配がまったくなくなります。

人工鼻の短所

人工鼻の最大の短所は、誰にでもは、使用できないということです。HHと比較すると、加湿能力が低いため症例によっては加湿不足になり、HHに交換しなければならないこともあります。

また、気道からの分泌物が多い患者では気道分泌物が人工鼻まで到達して、人工鼻が詰まって、吸気・呼気抵抗が上昇することにより危険な状態に陥ることがあります。ネブライザと同時使用すると人工鼻が詰まってしまうので、ネブライザ使用時には、外さないといけないということも面倒です。

このように、人工鼻を使うときは、その短所をしっかりと理解したうえで使用しないと患者に対して、十分な加湿ができなかったり、危害を加えてしまう恐れがあります。人工鼻がそれほど普及していない理由は、これらの理由が大きいと思います。

人工鼻の種類

細菌除去機能付き

人工鼻は、単純に加湿・加温効果のみを持つタイプと、細菌除去機能を持つタイプがあります。細菌除去機能がある人工鼻を使用すれば、万が一人工呼吸器回路が汚染された場合にも、患者を守ることができます。

給水機能付き人工鼻

人工鼻のみでは、加湿不足になる症例があること克服するために開発されたのが、給水機能付き人工鼻です。これは、人工鼻に給水機能付きのヒーターが装着されたもので、MEDISIZE社などから発売されています。

ヒーターで熱して水蒸気を吸気ガスとともに吸わせることにより、加湿効果を上昇させます。注意点としては、人工鼻が湿りすぎて呼気・吸気抵抗が上昇してしまう心配があるようです。

まとめ

一時的には、人工鼻による人工呼吸中の加温加湿が広まりましたが、現在ではHHによる加温加湿が大半を占めています。やはり、患者により使えたり使えなかったりするので使い分けが面倒です。知識がないスタッフが使用すると患者に危害を加えてしまうため、誰にでも使えるHHのほうが使い勝手が良いと考える施設が多いのではないでしょうか。


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