肺胞でのガス交換を決める因子は、『PAO2、拡散、喚起血流比、シャント』であると紹介しました。前回は、PAO2について解説しました。それを、ある程度理解したうえで今回は拡散について説明します。
PAO2をわかっていたほうが、拡散について理解が深まるので、できれば順を追って勉強するようにしてください。
それでは、学んでいきましょう!レッツエンドゴー!
拡散ってなあに
拡散って言葉を聞いたことありますか?現代の若者であれば、ツイッターなどでよく耳にしますね。ツイッターでの拡散の意味は、発信した情報が広まっていくことです。
呼吸の拡散も、似たような意味合いです。標準テキストでは、以下のように記されています。
『拡散とは濃度あるいは分圧の高い領域から低い領域へ濃度差に従って分子が移行することである。
ちょっとわかりにくい言い回しですね。Googleで調べたほうがわかりやすく書かれていました。
一つの液体に他の液体を、あるいは一つの気体に他の気体を入れた時、二つの物体がだんだんと混ざり、全体が等質となる現象。
(Googleより引用)
小難しい言葉で書かれていますが、液体や気体に何かを混ぜると、物質は濃いものから薄いものに移動して混ざっていくということです。日常的な拡散の例では、
- お湯を沸かしたヤカンにティーパックを入れる。
- お風呂に入浴剤を入れる。
- エレベーターの中でオナラをする。

私のボキャブラリーでは、このようなことが思い浮かびます。このように、何らかの液体や気体に何かを混ぜると全てが均等になるように混ざっていくことを拡散といいます。
拡散の特徴としては、濃度の高いところから濃度が薄いところに分子が移動する。
※拡散のイラスト
肺胞での拡散
先ほどの説明で、拡散についてわかりましたか?それでは、今回の本題である『肺胞の拡散』について説明してきましょう。(毎回、前置きが長すぎてすいません!)
肺胞の拡散は、肺胞と肺毛細血管の間で行われます。この場所で、拡散により、酸素と二酸化炭素の移動が行われます。

それでは、肺動脈から流れた血液が、肺胞で酸素を受け取り肺静脈となるまでに、どのように酸素分圧と二酸化炭素分圧が変化していくのかを順番に説明します。
肺胞でガス交換をされる前の、PO2とPCO2は、それぞれPVO2、PVCO2と表します。新しく出てきた『V』という記号ですが、これはveinの頭文字で静脈という意味です。
PVO2は、静脈血の酸素分圧、PVCO2は、静脈血の二酸化炭素分圧を表します。

※ここにA,a,Vの説明を囲っていれる
それぞれの正常値は、PVO2は、40㎜Hg、PVCO2は46mmHg程度です。これは、静脈血の酸素分圧と二酸化炭素分圧の正常値なので覚えておきましょう。
肺静脈は、肺胞に向かって流れます。そして肺胞と肺毛細血管が接触する部位で拡散が行われます。

拡散は、濃度の高いところから濃度の低い部位に分子が移動します。ここでのPO2は、PVO2=40mmHg、PAO2=105mmHgです。肺胞の酸素分圧が血液中の酸素分圧より高いので、肺胞から血液に酸素の移動が起こります。具体的には、酸素分圧がおよそ100mmHgになるまで移動します。
PCO2については、PVCO2=46、CACO2=40です。わずかに、肺胞のPCO2が低いので、血液中から肺胞に向かって二酸化炭素が移動します。
ガス交換が終わった、血液は肺静脈を通過して左心房に帰ります。この血液は、動脈血となり、PaO2=100mmHg、PaCO2=40mmHgとなります。
肺の拡散の補足
肺拡散の特徴
平常時に肺毛細血管と、肺胞が接触する時間は0.7秒程度です。そのうち、0.25秒でガス交換は完了します。

拡散が障害される病気は?
拡散障害が原因として低酸素血症を引き起こす疾患としては以下のものがあります。肺胞が炎症を起こしたり、肺胞に水がたまったりして拡散がスムーズにできなくなります。ここでは、まだ詳しく説明しませんが『呼吸不全の病態と管理』の項目で学びます。
- 間質性肺炎
- 肺線維症
- 肺水腫
- 硅肺
- 肺胞蛋白症など
ちなみに、拡散障害が発生するとPaO2はすぐに低下します。
それに対して、PaCO2は拡散障害になっても上昇しにくいです。なぜなら、二酸化炭素は酸素の20倍の拡散能力があるからです。
まとめ
- 酸素と二酸化炭素のガス交換は、拡散により行う。
- 拡散は、濃度の高い領域から低い領域に分子が移動すること。
- 肺動脈の分圧を覚えよう。
- 肺静脈の分圧を覚えよう。
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