今回は、気道抵抗というのは具体的にどういうものかということを学びます。人工呼吸器を扱ううえでは、必須の知識です。
物理的な内容なので、少し苦手と感じる方もいるかもしれません。そういう方は、最後のまとめだけ丸暗記しておけばとりあえず大丈夫です。
それでは、さっそく始めましょう!
目次(クリックすると移動します)
気道抵抗とは
気道抵抗は、「気道における空気の流れにくさ」のことです。抵抗というのは電気や物理の分野などにも出てくる言葉ですが基本的な概念は同じで邪魔するものというイメージです。気道に流れる空気を邪魔する力が気道抵抗ということですね。

気道抵抗のイメージ
ちなみに、なぜ気道抵抗というものが存在するかというと摩擦抵抗と粘性というものがあるからです。
空気は、目には見えませんが分子という状態で存在します。この分子が、気道のような細いトンネルを流れようとすると摩擦抵抗が発生します。
摩擦抵抗というのは、空気の分子同士がぶつかって流れを邪魔します。もう一つは、気道の壁に空気がぶつかってしまうことです。

摩擦抵抗のイメージ
粘性というのは、粘り気のことです。気体の粘り気というと、イメージしにくいかもしれませんので代わりに、液体で考えてみましょう。
水と蜂蜜があったとします。水を坂道の上から流すと、勢いよく流れます。それに対して、蜂蜜を坂道から流すと粘りがあるのでゆっくりと流れます。このように粘り気が大きい程ながれが遅くなります。

蜂蜜
イメージしずらいかもしれませんが、気体も液体のように粘り気というものがあります。
この粘性と摩擦抵抗による流れにくさを、気道抵抗といいます。
具体的な気道抵抗の定義は、「1秒間に1Lの空気を流すために必要な圧力です。」気道抵抗に打ち勝って、空気を送るのに必要な圧力という数値で表現します。

気道抵抗の単位
気道抵抗の求め方
気道抵抗は、計算式により求めることができます。臨床工学技士さんには、おなじみのポアズイユの式から求められます。気道抵抗の式は、以下になります。

気道抵抗の公式
1秒当たり、1Lの空気の、圧力・・・という意味です。逆から見ると意味が分かりやすいです。
この式を、丸覚えする必要はありませんが、この式で表している、l(管の長さ)、r(半径)が変化すると気道抵抗がどのように変化するかとういことが試験に出題されます。
喚起血流比のページでも、説明ましたが分数の場合、分子が小さくなると元の数字は小さくなり、分子が大きくなると大きくなります。反対に、分母が大きくなると元の数は小さくなり、小さくなると大きくなります。これについては、大丈夫ですかね・・・?
l(管の長さ)、r(半径)が、式の分子にあるか?分母にあるか?というのを注目してください。

気道抵抗の式
そうすると、lが大きくなると、気道抵抗がどうなるか?lが小さくなると、気道抵抗がどうなるか?ということが分かります。これが、この式の重要なポイントです。
問題
- 管の長さが、2倍になると気道抵抗は何倍になるでしょう?
- 管の半径が2 倍になると気道抵抗は何倍になるでしょう?
・
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大丈夫でしょうか?
問題1の回答
公式で、抵抗は管の長さに比例する。ということが分かります。したがって、管の長さが2倍になると抵抗は2倍になります。
実際に公式に、数字を入れて計算してみましょう。l=1、l=2の場合でそれぞれ計算してみましょう。

管が2倍になったら
そうすると、lを2倍にすれば、抵抗も2倍になることが分かります。
問題2の回答
次は、管の半径が2になったら気道抵抗は何倍になるのかを考えてみましょう。
式を見ると、抵抗は管の半径の4乗に反比例することがわかります。したがって、管の半径が2倍になると
2×2×2×2=16
となるので、気道抵抗は1/16になることが分かります。管が大きくなると、抵抗が小さくなって空気が流れやすくなることが分かります。
今の説明で分かりにくいと思った場合は、式に適当な値を入れて比較してみるとわかりやすいでしょう。
r=1とr=2の場合を、計算して比較してみましょう。

半径が2倍になったら
半径を2倍にしたら、気道抵抗の値が1/16になりましたね。
管が細いと、通路が窮屈になり分子同士がぶつかったり、分子が壁にぶつかる回数が増えます。また管が長いほど、通路を流れる時間が長くなるので、ぶつかる回数が増えます。気道抵抗では摩擦抵抗をイメージすることが大切です。

細い気道の摩擦抵抗
そして、気道抵抗では管の半径の影響が非常に大きいことが分かったと思います。
まとめ
- 気道抵抗とは、空気の流れにくさのこと。
- 気道抵抗は、1秒間に1Lの空気を流すために必要な圧力。
- 気道抵抗は、管の長さに比例して、管の半径の4乗に反比例する。
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